[要旨]
補助金で得た建物を担保にすることは、補助を悪用することにつながるものの、補助金を交付する会社が事業を成功させられないリスクに比較すれば、建物を担保にすることのリスクは、相対的に小さいものと考えられます、
[本文]
前回は、補助金適正化法では、補助金で得た不動産を担保にすることを禁止しているものの、補助金で得た不動産を担保にしなくても、補助金によって資産が増加した会社は融資を受けやすくなるので、担保にしたかどうかだけでは、補助金を利用して融資を受けたかどうかを判断することはできないということについて書きました。では、補助金適正化法の規定は無意味なのかというと、そうではないと私は考えています。
補助金を使って建てた建物を担保にすることを禁じる理由は、補助金で得た資産を補助事業の目的以外に利用することになるからというものであり、それは妥当なのですが、一方で、前述のように、明確な線引きも難しいわけです。では、どうすればよいのかというと、線引きはできないと考えるべきです。実際にしようとしても、線引きはできないでしょう。
その上で、補助金適正化法の規定は、強い意思をもって補助金を悪用した場合のために規定されていると考えるべきでしょう。このように述べると、非論理的と感じられると思われますが、そのような、形式上のリスクよりも、事業のリスクの方に注意を払うべきでしょう。
そもそも事業再構築補助金は、申請された事業計画書に基づいて審査員が審査し、事業が成功する可能性が高いと判断されたものが採択されます。しかし、そのすべてが計画通りに行くとは限らないということも事実でしょう。そして、そのリスクを考えれば、補助金で得た建物が悪用されるリスクは、それと比較して小さいものと考えられます。
事業再構築補助金の交付そのものがリスクを前提にして行われるわけですから、担保契約による補助金の悪用だけを厳格にすることは、私は、枝葉末節な考え方だと思います。そして、申請する補助金額が3,000万円を超える場合に限られますが、補助金の申請の際に、「金融機関による確認書」を提出するわけですから、そのような会社は非倫理的な行為をすることは希でしょう。
2021/11/2 No.1784