[要旨]
事業再構築補助金は、リスクに果敢に挑む会社を支援する補助金制度であり、補助事業そのものにリスクがあります。その一方で、形式的に根抵当権の設定にこだわりすぎることは、事業再構築補助金の斬新さを失わせることになると言えるでしょう。
[本文]
前回は、補助金で得た建物を担保にすることは、補助を悪用することにつながるものの、補助金を交付する会社が事業を成功させられないリスクに比較すれば、建物を担保にすることのリスクは、相対的に小さいということについて書きました。ところで、事業再構築補助金は、「企業の思い切った事業再構築を支援」(事業再構築補助金リーフレットより)することが目的です。
すなわち、リスクに果敢に挑む事業者を支援する補助金です。したがって、補助事業そのものがリスクを許容をされるものです。もちろん、リスクはないに越したことはありませんが、補助金事務局が根抵当権の形式的な要件にこだわりすぎることは、「木を見て森を見ない」ことに等しいと、私は考えています。では、補助金事務局はどうすればよいのかというと、その答えはひとつではありませんが、私は、次のように考えます。
すなわち、補助金で建てた建物への根抵当権の設定は限定的に認めることが現実的であり、そうでなければ、補助事業者と銀行の取引に支障が出てしまい、補助事業そのものの遂行が不可能になることも考えられます。具体的には、例えば、補助金の採択日よりも前に敷地に設定されていた根抵当権に限り、その敷地の上に補助金で建てた建物は、敷地の根抵当権の追加担保とすることを可能とし、かつ、建物の建設後、5年間は、当該根抵当権の極度額の増額を認めないなどいった条件を出すことが妥当と考えられます。
もちろん、補助金適正化法の主旨を無視することはできないので、補助事業者からは、「補助金で建てた建物を担保とする融資については、補助事業を中心とした当社事業遂行のためにのみ利用する」旨の念書を提出させ、かつ、当該根抵当権の権利者である銀行に、「その事業者には不適切な目的での融資を行わない」旨の確認書を提出してもらうといった対応を行うことで、不正は起きにくくなるでしょう。
事業再構築補助金のウリは、建物を建てるために補助金を出すことであり、そのことは大いに評価できることです。一方で、根抵当権の設定の有無という形式的なことにこだわりすぎると、そのせっかくの斬新さが消えてしまいます。いまいちど、事業再構築補助金の理念に立ち返り、担保に関する取扱いについて検討していただくことが望ましいと、私は考えています。
2021/11/3 No.1785