鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

譲渡担保融資と債権譲渡

[要旨]

事業再構築補助金を受け取る権利を担保として利用する融資を、譲渡担保融資といいます。また、同補助金を受け取る権利を銀行に買い取ってもらう、債権譲渡により資金を調達する方法を債権譲渡といいます。いずれも、補助金の交付決定を受けた会社の資金調達の方法として活用できるものです。


[本文]

事業再構築補助金を申請し、事業計画が採択され、かつ、交付決定を受けた会社は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が支払う予定の補助金を担保とすることで、銀行から融資を受けることができます。このような方法を、譲渡担保融資といいます。譲渡担保とは、受け取る予定の補助金(以下、債権と記します)を、銀行(または、金融会社等。以下同)に、融資の回収のためだけに利用するという取り決め(譲渡担保契約)をした上で、譲渡します。

これにより、外見的には、債権の所有権は銀行に移りますが、銀行は、その債権を、融資の回収以外には利用できません。譲渡担保契約をした後、事業者は銀行から融資を受けます。融資額は、譲渡した債権の金額以内とすることが一般的です。そして、債権の支払期日が到来すると、銀行は、第三債務者(この例で言えば、中小機構)から譲受債権の代金を受け取り、それを融資の回収にあてます。もし、受け取った債権の代金が、融資額を上回るときは、銀行は、その上回る額を事業者に支払います。これが譲渡担保融資です。

補助金は、原則として、実績報告を行ってからでないと受け取ることができませんので、事業を遂行するための資金調達方法のひとつとして、この融資を利用することは得策と思います。なお、事業再構築補助金補助事業の手引きによれば、「交付決定後に、本補助金の交付決定債権を金融機関に譲渡し、譲渡債権の対価として資金を調達する」ことが可能のようです。

交付決定債権とは、受け取る予定の補助金を指すと思われますが、その権利を銀行に譲渡することで、すぐに現金化できます。債権譲渡と譲渡担保は類似しているように思われますが、債権譲渡は、法律的には、融資契約ではなく、債権の売買契約です。具体的には、補助金を受け取る権利を銀行に買い取ってもらい、事業者は、売却代金から利息相当額(割引料)を差し引いた残りを受け取ります。

そして、事業者が実績報告の後、債権の所有権を持つ銀行は、中小機構から債権代金を受け取ります。このように、債権譲渡は融資契約ではありませんが、事業者から見れば、実質的には譲渡担保融資とほぼ同じように、資金の融通を受けることができます。また、譲渡担保融資、債権譲渡以外にも、事業再構築補助金の採択を受けた会社向けの融資制度を用意している銀行は多いようですので、詳しくは、銀行に問い合わせて見てください。

2022/1/15 No.1858

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