[要旨]
事業再構築補助金の公募要領の、建物への担保設定に関する規定に厳密に従えば、根抵当権の設定されている土地に建物を建てることは不可能ということになります。この規定は、あまり現実的なものではないので、今後、より現実的なものに変更されることが妥当でしょう。
[本文]
前回、事業再構築補助金で建設した建物への、担保設定の制限に関して説明しましたが、今回は、これに関する疑問点について述べます。これに関して、最も問題と感じることは、根抵当権が設定されている自社所有の土地に、補助金で建物を建てようとするときについてです。というのは、根抵当権が設定されている土地に、新たに建物を建てたとき、その建物も、土地に設定されている根抵当権の担保物件として追加することが、一般的だからです。
その理由は、もし、建物の建っている土地を売却しようとするとき、土地だけしか売却できないと、土地を購入した人にとっては、土地の利用に制限があるため、売却価額が少なくなるからです。(そのような担保権の侵害を防ぐために、民法では、後述する一括競売が認められています)
また、銀行との融資取引契約では、担保となっている土地に建物を建てたとき、それを担保に加えないことは、契約違反と規定されています。(この説明は、理解を容易にするために、正確でない部分がありますので、ご了承ください)したがって、銀行との契約違反にならないようにするためには、根抵当権の設定されている土地へは、補助金を使って建物を建ててはいけないということになります。
また、仮に、銀行が、根抵当権のある土地に、補助金を使って建物を建てること、そして、その建物を、土地に設定されている根抵当権の担保として追加しなくてもよいことを認めたとしても、民法第389条では、「抵当権の設定後に、抵当地(抵当権の設定されている土地)に、建物が築造されたときは、抵当権者(担保の権利を有している銀行)は、土地とともにその建物を競売することができる」(これを「一括競売」といいます)と規定しているので、実質的には、建物にも根抵当権が設定されている状態に近い状態になります。(実務的には、担保処分を円滑に行えるようにするために、銀行は、建物についても正式に担保とすることを会社に求めます)
このようなことから、建物の担保に関する公募要領の規定に厳密に従うとすれば、前述のとおり、根抵当権が設定されていない土地でなければ、建物を建てられないことになるでしょう。ただ、この規定は、あまり現実的なものではないので、今後、より現実的なものに変更されることが妥当であると、私は考えています。