鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

先ず自分に要求せよ

[要旨]

経営者が部下にやって欲しいと考えることは、経営者が率先垂範するという考え方は大切ですが、その一方で、プロ経営者は、自らが事業経験のない会社を経営することもあり、必ずしも、自分ができることでなければ、部下にやってもらってはいけないということでもありません。


[本文]

明治時代から昭和にかけて活躍した小説家の、武者小路実篤の残したことばに、「他人に要求することを先ず自分に要求せよ」というものがあるそうです。これは、ある面で、至極当然のことだと思います。自分にできないことを、他人にやらせようとする人は、口先だけで、ちょっと嫌な人に思われてしまいますよね。

特に、部下のお手本になるべき存在である経営者であれば、部下にやって欲しいことは、まず、経営者が率先垂範しなければ、部下は難しいことにチャレンジしようとはしないでしょう。でも、その一方で、「自分にできることしか他人にやってもらえないとすれば、リーダーは、部下に対して、指示できることが限定されてしまう」と言っていた人もいたことを思い出しました。

それも確かに当然だと思います。例えば、会社を設立して社長に就任した人が、自分では簿記が分からないので、簿記のわかる従業員を雇って経理を任せるということは、よく見られることです。また、サントリーホールディングス社長の新浪剛史さんのような、いわゆる、プロ経営者は、経営する会社の事業経験がないということは珍しくなく、新浪さんご自身は恐らく造酒はできないと思いますが、酒造メーカーの経営をしています。

すなわち、新浪さんは、自分でできないことを部下にやってもらっているということになります。そして、新浪さんのようなプロ経営者は、年々増えており、私は、21世紀は、事業そのものよりも経営の巧緻の方が、事業を成功させる重要な要因になりつつあると思っています。そういう意味では、特に、プロ経営者が社長に就いている会社では、社長が自分でできないことを、どんどん部下にやってもらう時代になっているといえるでしょう。

今回の記事は、他人にやってもらおうとすることは、自分でできなければならないということが正しいかどうかの結論よりも、いまは、どちらもあてはまる面白い時代になっていると感じたので、記事にしてみました。結論がはっきりしていないという面では申し訳ないのですが、もし、将来、この件で何か新たな気づきがあったら、また、記事にしたいと思います。

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