[要旨]
人は、それぞれ、異なる意見を持っているので、一致することはあまりありません。これは、「上司は自分を否定するためにいる」ということでもあります。そこで、会社では、「上司の意見が仮に正しい」という仕組みができています。ただし、上司は自分の意見を正しいとすることの裏付けとして、自分の決断に対しての責任を負わなければなりません。
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中部大学の武田邦彦教授が、ブログに、会社にはなぜ上司がいるのかということについて書いておられました。「会社にはなぜ上司がいるかというと、部下と意見が合わないことが最初から予想されているからです。もし、すべてのことで上司と部下の意見があえば、二人とも同じ地位でも行動には差し障りが無いのですが、人間だから絶対にそういうことはあり得ません。そこで『意見が違うときには上司の考えを仮に正しいとする』というのをシステムにしたのが会社の上司関係です」
私も武田先生と同じように考えています。人は感情を持っているので、自分と異なる意見を持つ人がいると、「黙っていて欲しい」と思っていたりしますが、そもそも、複数の人が集まれば、意見は同じになることはないわけです。そう考えれば、上司や部下と意見が違うことがあっても、あまり腹を立てることはなくなります。
そして、もうひとつのポイントは、「上司の考えを『仮に』正しいとする」と、武田先生がおっしゃっておられることです。人の考えは、絶対に正しいということはありません。ですから、異なる意見があるとき、どちらかが正しくて、一方が間違っているというだけでなく、両方が正しかったり、両方が間違っていたりすることもあります。だから、「仮に上司が正しい」ということにすることが会社である」と、武田先生はおっしゃっておられるのでしょう。
では、意見が異なるとき、部下の意見ではなく上司の意見を仮に正しいことにするのはなぜかというと、これについては、武田先生は言及していませんが、それは、上司には権限と責任があるからだと思います。上司には、自分の意見を通すという権限があるから、仮に上司の意見を正しいことにできるわけですが、それと同時に、責任も負わなければなりません。これも広く理解されているように思われがちですが、上司が権限だけは使うものの、その裏付けとなっている責任は負わないという例はしばしば見られるので、注意が必要だと思います。