鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

心理的安全性

[要旨]

業績を高めるためには、上司と部下との間で円滑なコミュニケーションを維持することは大切です。そこで、職場での心理的安全性を実現する必要がありますが、そのためには、経営者や管理者が、普段から部下が話しやすい環境を作ることが求められます。


[本文]

人材育成コンサルタント吉田幸弘さんのご著書、「どう伝えればわかってもらえるのか?部下に届く言葉がけの正解」を拝読しました。この本は、吉田さんのコンサルティングのご経験から、部下とどのように接すればよいのかというノウハウを書いておられるご著書です。そして、39の具体的な事例とともに、簡潔な助言が書かれているので、部下との接し方で悩んでおられる経営者、管理職の方にとって、読んですぐに役立つご著書だと思います。

その39の事例の中で、私が最も印象に残った助言は、事例17の、「部下の本音を聞きたいときは、心理的安全性を高める」というものです。心理的安全性とは、リーダーや同僚に対して意見を言っても大丈夫と安心できる状態であり、「何か言ったら怒られる」、「これを言ったら自分の評価が下がる」と感じないような状態です。それを実現するには、「はい」、または、「いいえ」で答えを求めるクローズドクエスチョンではなく、「今困っていることはどのようなことですか」など、自由に答えることができるような、オープンクエスチョンで質問をすることが、その基本的な方法です。

そして、ここまでの内容は、多くの方がすぐに理解できると思います。とはいえ、心理的安全性のある職場はあまり多くないということも、現実だと思います。理解しやすいことなのに、あまり実現されていないということの理由には、心理的安全性は一朝一夕には実現ではできないということが挙げられると思います。例えば、上司が部下にオープンクエスチョンをしたとしても、普段から部下の前で不機嫌そうな態度をとっていれば、部下は上司に対して正直な気持ちを伝えることはできるようにはならないでしょう。

ですから、経営者や管理者は、部下と直接話をするときだけでなく、普段から、部下に安心してもらえる環境を作ることに注力する必要があります。吉田さんのご著書には、部下との具体的な対応方法が中心に書かれていますが、その下地となる部分は、経営者や上司は、部下の働きやすい職場づくりに努めなければならないということも示唆しておられるのだと思います。

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