鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

マネジメント層の構造(3)

[要旨]

1990年代までは、20人以上の取締役が就任している上場会社は珍しくありませんでしたが、そのような会社は、取締役会が形骸化していました。そこで、ソニーのように、実態に合わせ、実際に意思決定を行っている人だけを取締役とし、残りの取締役は、業務執行に専念する幹部従業員である、執行役員に就けるという体制の、執行役員制度を導入するようになりました。


[本文]

前回に引き続き、マネジメント層の構造について説明します。前回は、1990年代の日本の上場会社では、20名以上の取締役が選任されている会社は珍しくないものの、実態は、上席の数名の取締役が主な意思決定を行い、残りの取締役が主に業務執行に専念している状態であったということを説明しました。

しかし、1990年代後半からは、形骸化している取締役会について、実態に合わせた体制に変更する会社が登場するようになりました。その先駆けは、ソニーで、1997年6月から、同社は、38名いた取締役のうち、代表権を持つ7名の取締役と、社外取締役3名の、計10名のみが取締役に留まり、その他の取締役は、新たに設けられた役職の、「執行役員」に就任しました。

ただし、執行役員は、株主総会で選任される役職ではないことから、「会社役員」ではなく、会社から雇用される、従業員としての位置づけの役職です。また、「取締役」は、当時の商法(現在の会社法)で規定された役職ですが、「執行役員」は、法律で規定された役職ではありません。

したがって、執行役員の肩書を持った従業員の方の役割について、定義は明確ではありませんが、それまでの取締役の役割のうちの、業務執行に相当する部分を専念して遂行する幹部従業員と言うことができるでしょう。そして、同社の10名の取締役は、会社の経営方針等の意思決定と、事業の遂行状況の監督という、本来の取締役の役割を担うようになりました。

ただし、取締役には、もともと、業務遂行を担う役割もあることから、同社の社外取締役を除く7名の取締役は、執行役員を兼任しました。このように、経営体制の実態に合わせた執行役員制度は、徐々に他の会社でも導入されるようになり、現在でも執行役員のいる会社はポピュラーになっています。この続きは、次回、説明します。

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