鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

名ばかり社外取締役

[要旨]

日本では、名ばかり社外取締役が多く、株主主権が形骸化しています。その原因は、日本の会社では、従業員主権となっていることも多いからと考えられます。したがって、これからは、法律に合わせて株主主権となる運営を行うか、実態に合わせて、株式会社を組織変更するなどの対応が必要と思います。


[本文]

日経ビジネス2021年5月3日号に、社外取締役に関する記事がありました。記事の要旨は、「4月に、金融庁などが、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の改訂案をまとめ、そのポイントのひとつが、独立した社外取締役の3分の1以上の選任となっているが、東証プライム市場(現在の市場第1部)では、現状では、1,000人の社外取が不足するとみられている」というものです。

この記事を読むと、社外取締役が不足していることが問題になっているという意味に受け止められてしまいがちですが、私は、本当の問題は、社外取締役が不足しているということよりも、上場会社が、いままで、社外取締役を数合わせでしかそろえてこなかったことが問題だと考えています。記事にも書かれているように、現在の社外取締役の多くは、取締役会の決議事項を追認するだけの「名ばかり社外取締役」のようです。

なぜ、そのようになってしまうのかというと、株式会社は、法律上は、株主が最終的な意思決定者であり、その株主に委任された取締役が、業務執行などの意思決定を行うということが建前になっているものの、現実には、従業員から昇格した役員たちが、非公式に意思決定を行い、それを、あとから、取締役会などで、形式的に、「決定」を行っているからでしょう。これを、ひとことでいうと、会社の主権者は、形式的には株主でも、実態は従業員だということです。

このような会社では、本来の意味での社外取締役は不要であることから、意欲的に社外取締役を引き受けようとする人材も現れず、社外取締役を増やそうとしても、就任してもらえる人がみつからないという事態になってしまったのでしょう。本題からそれますが、私は、日本の会社の主権者が従業員であることが、直ちに問題であるとは考えていません。日本の会社の従業員は、米国の会社の従業員に比較して、会社への帰属意識が高いので、質の高い労働力になっているということも事実です。したがって、問題なのは、実態と法律がかけ離れているということです。

では、今後、社外取締役を活用できない会社はどうすればよいのかというと、実態も株主主権とすガバナンスを目指すか、実態にあわせて、例えば、株式会社を合同会社に組織変更するなどの対応をとるべきだと思います。もちろん、このようなことは、直ちに実施することも難しいと思いますが、一方で、「名ばかり社外取締役」の数合わせを、いつまでも続けることも、無意味であり、無駄なことといえるでしょう。

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