[要旨]
持株会社は、子会社の株式を持つことで、その子会社を従属させ、企業集団を形成します。これは、社内カンパニー制を導入している会社の、本社と社内カンパニーの関係に類似しており、本社と社内カンパニーを、法律的に別の会社に分離させたものと言えます。ただし、企業集団内の指揮系統はひとつであり、企業集団をひとつの会社みなして、企業集団全体の業績を表す連結財務諸表が作成されます。
[本文]
前回は、社内カンパニーについて説明しましたが、今回は、持株会社について説明します。典型的な持株会社は、社内カンパニー制を導入している会社が、社内カンパニーを、法律的にも別の会社(子会社)として切り離し、本社部門が持株会社(親会社)として、社内カンパニーと同様に、傘下の子会社を指揮する状態の会社です。
ここで注意していただきたいことは、持株会社の傘下の子会社は、法律上は別の会社であっても、子会社の50%を超える株式は持株会社が所有しているので、持株会社の指揮下にあるということです。したがって、持株会社とその傘下の子会社(これらの会社を、「企業集団」ということがあります)は、実質的には、ひとつの会社ということです。
しばしば、「親会社と子会社は別の会社」ということを言う方がいますが、それは、形式的な状態であり、前述のように、実質的にはひとつの会社です。そこで、企業集団では、それに属する複数の会社の財務諸表を連結して、連結財務諸表が作られます。むしろ、企業集団のそれぞれの財務諸表を個別に見ても、その意義は低く、企業集団全体の業績を表している連結財務諸表を見なければ、正確な業績を把握することはできません。
その理由は、前述の通り、持株会社とその子会社は、ひとつの指揮系統の下に、支配する会社と従属する会社になっているからです。では、社内カンパニー制を導入している会社と、持株会社の意義の違いは何かというと、持株会社の場合、子会社がそれぞれ、明確に分かれて会計記録を行っていることから、傘下の子会社を他社に売却したり、整理したりすることが、比較的に容易であると考えられます。
逆に、持株会社が、これまで資本関係のなかった会社の株式を取得し、子会社化することで、企業集団に入れることも容易となります。今回は、持株会社と企業集団について説明しましたが、次回は、持株会社の種類などについて説明します。