鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ゾンビ会社をどう見分けるのか

[要旨]

中小企業の財務諸表の数値は正確でないことが多いので、単純に、財務諸表の数値だけで、支援すべき会社かどうかを判断することは妥当ではありません。したがって、現時点では、支援の対象としない会社について、広く議論して行くことが大切です。


[本文]

前回は、経済アナリストの太田知宏さんのお話として、コロナ対策は、ゾンビ会社も延命することになるので、支援先を見極める必要があるということを引き合いに出しましたが、私は、そのことはあまり意味がないということをお伝えしました。今回は、なぜ、その意味がないのかという理由を述べます。理由は2つあるのですが、ひとつめは、ゾンビ会社として支援の対象から外す会社の要件を定めることは、極めて難しいということです。

なぜ困難なのかという理由のひとつは、中小企業の多くは、財務諸表があまり正確ではないないからです。例えば、売掛債権、棚卸資産減価償却資産などは、実際の評価より多く計上されていることは珍しくなく、その中には、表面的には資産超過でも、実質的には債務超過ということがあります。したがって、財務諸表の数値だけでは、単純には、支援の対象とするかどうかの判定をすることは、実態に即していないと言うことができます。

ふたつめは、債務超過の会社であっても、オーナーが資産を持っている場合は、会社とオーナーを一体として見れば、資産超過ということがあります。このような場合も、会社の財務諸表だけで判断することは、実態に即さないということになります。そこで、「支援をするにあたってゾンビ会社を見極めるべき」という指摘をするだけでは、ほぼ不可能なことを行わせようとするだけのことになってしまいます。では、どうすればよいのかというと、「支援の対象を外す会社について、具体的に議論を深めて行くべき」という提案をすべきだと、私は考えています。もうひとつの理由については、次回、説明します。

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