鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

売上原価と仕入額

[要旨]

売上総利益は売上高と売上原価の差で求めますが、売上原価と仕入額は異なることに注意が必要です。


[本文]

先日、私が8年前に出版した、「図解でわかる在庫管理いちばん最初に読む本」が増刷され、第10刷になりました。これを機会に、今回から数回に分けて、在庫管理に関する改善ポイントを説明して行きたいと思います。まず、今回は、売上原価について説明します。売上総利益(粗利益)は、売上高と売上原価の差であり、これを数式で表すと、売上総利益=売上高-売上原価となります。

ところで、売上原価と仕入額は別のものなので、売上総利益=売上高-仕入額とはなりません。これについては、多くの経営者の方は理解しておられますが、売上原価と仕入額の違いを理解しておられない経営者の方も少なくないようなので、ここであらためて説明します。ちなみに、売上原価は、製造業では計算が少し複雑になるので、ここでは、卸売業や小売業などの流通業を前提に説明します。例えば、商店Aで、7月の売上高が1,800万円で、仕入額が1,500万円だった場合、その差額の300万円が、現金(キャッシュフロー、CF)の増加要因にはなりますが、前述の通り、売上総利益ではありません。

では、7月の売上総利益はどのように求めるのかというと、まず、7月の売上原価を求めます。7月の売上原価の求め方は、7月の月初の在庫高(=6月の月末の在庫高)に、7月の仕入額を加え、そこから7月の月末の在庫高を引きます。これを数式で表すと、7月の売上原価=6月の月末の在庫高+7月の仕入額-7月の月末の在庫高となります。この数式の意味は、7月の売上に充てられた棚卸資産(在庫)がいくらかを求めるというものです。これは、「費用収益対応の原則」の考え方に基づくものです。

例えば、7月にたくさん仕入をしても、必ずしも、それらすべてが販売されるとは限らず、6月以前に仕入れた棚卸資産が7月の販売にあてられたり、7月に仕入れた棚卸資産が7月には販売されずに、8月以降に繰越されることもあるため、前述のような数式で売上原価を計算します。そこで、繰り返しになりますが、7月の仕入額は、必ずしも売上原価(=費用)になるとは限らないという点に、注意が必要です。これは、逆に言えば、仕入を減らしたからといって、そのことが、必ずしも費用を減らすことにはなりません。

話を売上原価の計算に戻すと、商店Aの6月の月末在庫高が1,000万円、7月の月末在庫高が1,200万円だったとすると、同社の7月の売上原価は、1,000万円+1,500万円-1,200万円=1,300万円となります。したがって、同社の7月の売上総利益は、1,800万円-1,300万円=500万円です。

ちなみに、今回の記事の内容とは直接関係はありませんが、月末の在庫高は、売上原価を決める要因になっていますが、その在庫高は、いわゆる「棚卸」で測定されるので、売上原価を正確に測定するためには、この「棚卸」が正確に行われらければなりません。すなわち、棚卸が重要と言われているのは、このような理由によるものです。

 

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