鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

民法改正による第三者保証の意思確認

[要旨]

4月から改正民法が施行され、第三者保証は公証人から意思確認を受けることが必要となったことから、今後、銀行は、第三者保証を求めることは、ほとんどしなくなると思われますが、現在、第三者保証を条件に融資を受けている会社は、銀行から、融資条件の変更を依頼される可能性があるでしょう。


[本文]

平成29年に民法が大幅に改正され、令和2年4月から施行されました。(ご参考→ https://bit.ly/2AoCdGm )この改正の中で、事業を営む会社に関わるものは、事業用の融資について、経営者等以外の保証人については、公証人による意思確認手続が必要になった(同法第465条の6~第465条の9)というところです。すなわち、経営者等以外の第三者が、会社の融資の連帯保証人になるときは、公証人役場に行き、公証人の前でその意思を表明しなければなりません。

ここでは、その手続きについての説明は割愛しますが、これは、銀行から見れば、実質的に第三者保証を禁止されたに等しい改正です。なぜなら、公正証書を作成してまで保証契約を結ぶことは、銀行にとって大きな負担になるからです。また、第三者を保証人にすることそのものが、現在は、社会的な批判を浴びることになるので、余程の理由や事情がなければ、銀行は第三者を保証人にすることはないでしょう。

すなわち、第三者の保証がなければ、回収の懸念がありれそうな融資は、今後、銀行は実行しようとしないということです。したがって、このような例はあまりないかもしれませんが、仮に、資産家である第三者が、会社の融資取引の保証人になっているために、いままで融資を受けられていた会社があったとすれば、これからは、銀行は、その第三者の保証を免除して融資取引を続けようとはせず、融資取引を解消しようとすることになるでしょう。

すなわち、これからは、融資審査のポイントは、保証の要素の比重は低くなり、事業の内容の比重が、ますます高くなるでしょう。ちなみに、今回の民法改正は、第三者の保証契約についての改正ですが、実務的には、第三者からの担保(≒不動産担保)提供についても影響すると思われます。その詳細な理由については割愛しますが、銀行が不動産を担保にするときは、その所有者を必ず連帯保証人にするからです。そこで、第三者の不動産を担保にしようということも、これからは、実質的に不可能になるのではないかと思います。

実際に見る例は、会社の事業には関わっていない人(社長の知人や親族など)が所有する土地を、会社が工場の敷地として賃借しており、会社が銀行から、その工場を建設するときの融資を受けたときに、敷地を担保として提供してもらい、かつ、連帯保証人になっているという場合です。このような会社の場合、銀行から、融資条件について、何らかの変更を要請されることになる可能性があります。今後、この民法改正によって、銀行から何らかの条件変更の要請があった場合は、内容がやや複雑なので、融資に関する専門家にご相談されることをお薦めします。

 

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