鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

担保提供者と連帯保証人はセット

銀行から融資を受けるときに、担保を提供

した人は、融資の連帯保証人にもなっても

らうことが一般的です。


担保(ここでは不動産担保を前提として話

を進めます)の契約と、連帯保証契約は、

それぞれ別の契約なのですが、銀行職員の

頭の中は、「担保提供者=連帯保証人」と

なっています。


それは、朝、だれかに会ったら「おはよう

ございます」とあいさつするというくらい

あたりまえのことになっています。


ちなみに、銀行が制定している担保契約書

の担保提供者の欄には、「根抵当権設定者

(注:担保提供者のこと)兼連帯保証人」

と印刷されており、こちらも担保提供者は

連帯保証人という前提になっています。


しかし、銀行は、なぜ、担保提供者を連帯

保証人にするのか、そのはっきりとした理

由が私には見つかりませんでした。


でも、それなりの理由はあるようです。


その最も大きい理由として考えられること

は、不動産の担保提供者は、根抵当権の消

滅請求(民法第398条の22第1項)が

できることです。


(どんなときでも根抵当権の消滅請求がで

きるわけではありませんが、ここでは詳細

な説明を割愛します)


具体的には、銀行が担保を処分しようとす

るとき、担保提供者が根抵当権の極度額

(担保契約で定めた、融資を担保する上限

の金額)相当額を銀行に支払うと、担保契

約は消滅します。


例をあげて説明すると、A社の社長のBさ

んは、A社の社屋を新たに建てるため、B

さんの夫人の父親のCさんが持つ土地を借

りて、そこに社屋を建てることにしたとし

ます。


その際、A社は銀行から1億円の融資を受

けたので、Bさんは連帯保証人に、Cさん

は(連帯保証人にならずに)社屋の敷地を

担保として提供したとします。


(A社の社屋は、融資が行われる時点で完

成していれば、敷地とともに担保契約が結

ばれますが、融資が行われた後に完成する

場合は、完成した時点で、担保に追加され

ることが一般的です)


ここで、会社の敷地は融資を受けて取得し

たものではなく、もともとCさんが所有し

ていたものなのに、なぜ担保にするのかと

いう疑問を持つ方がいるかもしれません。


これについての詳細な説明も割愛します

が、まず、担保は処分しやすいものでなけ

ればならないという原則があります。


それは、担保の目的は、担保を処分して融

資の回収にあてることだからです。


しかし、実務的には、建物を処分しようと

するときは、敷地とセットでないと処分が

かなり困難になるので、敷地も担保にする

ことが一般的です。


これを言い換えると、建物だけを担保にし

ても、処分価格がかなり低くなり、担保に

する意味があまりなくなってしまうという

ことです。


話を戻し、A社が社屋建設のための融資を

受けたあと、不幸なことに業績が悪化し、

融資の返済が困難になったことか場合は、

担保を処分して、融資の回収を行うことに

なります。


その時点で、A社が社屋を建てる際に受け

た1億円の融資の残額が8,000万円、

その後に、別途受けた運転資金としての融

資が5,000万円あったとします。


このとき、Cさんが、担保契約の極度額の

1億円を銀行に支払って根抵当権消滅請求

をすると、根抵当権は消滅します。


もちろん、銀行は、Cさんから1億円を受

け取れるので、ある程度の利益はあるので

すが、建物の処分がしにくくなるので、全

体としては、銀行は融資の回収は煩雑にな

ります。


しかし、担保契約の時点で、Cさんが連帯

保証人になっていると、民法の規定(第3

80条、第398条の22第3項)で、C

さんは根抵当権の消滅請求ができなくなり

ます。


このことから、銀行が担保提供者を連帯保

証人にする理由は、根抵当権消滅請求を行

うことができないようにし、担保処分が円

滑に行えるようにすることが主な理由と考

えられます。


その他にも考えられる理由があると思いま

すが、総じて、担保処分が円滑になるよう

にするためと考えられます。


もちろん、銀行が担保提供者と担保契約を

結ぶときは、連帯保証人にもなってもらう

という説明は行い、契約書の控えも渡され

るので、担保提供者が知らないうちに連帯

保証人になっていたということはないと思

います。


ただ、前述の例のような場合、CさんはB

さんから、「敷地を担保に入れて欲しい」

とだけ依頼されることが多いので、連帯保

証人になることは、強く意識していないか

もしれません。


このようなこともあることから、銀行との

契約は、前もってよく説明をきいておくこ

とが欠かせません。


最後に、本文中の法令に関する説明は、理

解しやすさを優先して記述しており、必ず

しも正確な説明にはなっていない点があり

ますことをご了承ください。

 

 

 

 

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