4月29日付けの日本経済新聞に、「雇用調整助成金、申請後押しー社労士の連帯責任解除」という記事がありました。(ご参考→ https://s.nikkei.com/2YpkV5j )記事の主旨は、「休業に追い込まれた外食・サービス業などを営む小規模の会社の多くは、給与台帳などの法定書類を作っていない。そのため、会社の申請書類に偽りなどがあった場合に、連帯責任が課される社会保険労務士は、それらの会社から雇用調整助成金の申請代行の依頼があっても、それに応じることに躊躇し、雇用調整助成金の申請がなかなか進んでいない。そこで、厚生労働省は、申請代行をした社会保険労務士に連帯責任を課す規定を、特例的に解除する方向で検討に入った」というものです。
この、厚生労働省の対応は妥当だと思います。ちなみに、本旨から外れますが、小規模事業者持続化補助金についても、対象の会社が20人以下(宿泊・娯楽業を除く商業・サービス業は5人以下)と小規模であり、かつ、補助金額も、最大50万円(今年創業した会社等は、最大100万円)と、それほどの金額ではないにもかかわらず、申請に比較的多くの労力が必要であり、実効性がないのではないかと思われ、私は、こ補助金についても、申請方法に改善が必要なのではないかと考えています。(ご参考→ https://bit.ly/3bVEshZ )
話を戻して、今回、雇用調整助成金について記事にした理由は、労働法制が実態とかみ合っておらず、このような非常事態に、その弊害が大きく現れる結果になったと感じたからです。私は、現在の労働法制の目指すところが、誤っているとは考えていません。しかし、前述のように、実態としては、その法制が十分に浸透しておらず、実効性が高くないことも実態だと思っています。では、この状態については、今後、どのようにすれば解決できるかということは、私も、直ちには、明確にはできません。
ただ、現在の経済の混乱状態が落ち着いた段階で、改めて、その乖離を縮めていく対策の必要性は高いとも考えています。これまでの厚生労働省の対応は、法律の整備は行ってきたものの、結果的に、法律が画餅になってしまっている面があり、私も残念とは思いますが、その面については、厚生労働省の手落ちであると思います。確かに、被雇用者側も十分に守られる必要がある訳ですが、労働法規が壁になってしまうと、逆に、経済活動の足かせにもなりかねません。
ちなみに、韓国では、若年者層の雇用環境を改善しようと、最低賃金を29%引き上げたものの、そのことがかえって会社側の雇用を抑えようとする動きにつながり、結果として、失業率も上昇してしまい、政府の当初の思惑を達成できなくなってしまったようです。最低賃金の引き上げが、直ちに間違っている訳ではないのですが、効果が得られない状態で実施すれば、無意味であったり、逆の効果が出てしまったりします。話を戻して、繰り返しになりますが、日本の労働法制も、国民の間で、もう少し幅広い議論を経てからでないと、効果のあるものにならないと、冒頭の新聞記事を読んで感じました。
ちなみに、この事例は、労働法制に限らないと思います。一般の会社においても、規則だけはたくさん作られるものの、それが有名無実化の状態になっていて、規則そのものが無意味になっていたり、規則そのものを守ることが目的化されて、本来の主旨が実践されないということも珍しくありません。繰り返しになりますが、前述の記事の事例は、本来は、労働者を守るための法律が、逆に、労働者の雇用を守るために機能していない結果になったことの表れであり、規則の整備は、実態に鑑みる必要性が高いということを学ぶ事例になっていると思います。