先日、「融資コンサルタント(または、資金調達コンサルタント)は、クライアントに対して、どういう支援をするのか」という質問をうけました。確かに、「融資コンサルタント」は何をしてくれるのかという点については、ぼやっとしているように、私も思います。その一方で、融資コンサルタントを名乗る人はたくさんいて、かつ、それぞれ、独自のやり方で仕事をしていることも事実で、一律にどういった仕事をしているのかを明確にすることも難しい面があります。
ただ、これまでに私がご相談を受けて来た経営者の方のお話を聴くと、「自分の代わりに銀行に行き、融資の承認を得られるよう、銀行を説得してきて欲しい」という要望を持っている方が多いと感じています。本旨からそれますが、私はこのようなご依頼は受けません。確かに、融資を受けたい会社から見ると、融資コンサルタントに銀行との折衝を代わりに行ってもらえるとすれば、自分は面倒なことをしなくても済むようになると感じられるかもしれません。しかし、銀行から見ると、経営者の顔が見えない会社からの融資の申し込みは、承認しにくいことに加え、銀行との関係が疎遠になってしまいます。
このようになることは、顧問先にとって好ましくないことであり、そのようなことにコンサルタントが手を貸すとすれば、本当に顧問先を助けることにはならなくなってしまうので、私は融資の折衝の代行はお受けしていません。話を戻して、では、融資コンサルタントはどういうことで顧問先の役に立つのかというと、私の考える融資コンサルタントの役割は、顧問先が融資を受けられやすくなるようにするためのご支援をすることです。前述の、融資の折衝を社長に代わって行うことは、手続きの代行であって、顧問先が融資を受けられやすくなるためのご支援ではありません。
では、具体的に、融資を受けられやすくなるためのご支援とはどういうことかというと、そのひとつは、顧問先のポテンシャル(潜在能力)を深堀りし、銀行がそれを納得できるよう、客観的な資料としてまとめることです。銀行が融資審査を行うに当たっては、融資相手の会社に対して目利き能力を発揮することが求められていますが、実際には、必ずしもそれが発揮されているとは限りません。その理由のひとつは、1つの案件に対して多くの時間を割くことができないという事情もあります。そこで、私のような融資コンサルタントが会社の情報を詳しく分析し、その結果が客観的なデータとなって明らかになれば、銀行も融資の承認を行いやすくなります。
ただ、これは、もともと会社にポテンシャルがあるということが前提になります。すなわち、ご相談を受けた会社の中には、融資コンサルタントが会社の状況を詳しく分析をしても、融資の承認理由として取り上げられそうな材料がとぼしく、融資の承認を得ることが難しそうだということもあります。そのような場合は、融資コンサルタントが事業の改善策を提案してそれ実践してもらい、その結果、業況の改善の傾向が見られれば、そこを銀行に評価してもらって融資の承認につなげます。
ここまでの融資コンサルタントの役割についての内容をまとめると、(1)融資を受けたい会社のポテンシャルを、銀行が分かりやすいようにまとめること、(2)ポテンシャルが少ない場合は、それが増加するよう助言することの、2点です。融資を受ける意味は、会社の業況を改善するための手段にすぎず、最終的な目的は、会社の事業の発展です。融資を受けることそのものを目的にしてしまうと、本当の事業の目的である、事業の発展に目が行かず、事業を運営する意味もなくなってしまうということに、十分に注意しなければなりません。