鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行は本当に粉飾を見抜けないのか

先日、日本経済新聞が、地方銀行の貸倒引

当金の増加について報道していました。


(ご参考→ https://s.nikkei.com/373hMJL


記事では、「東京都に本店がある、(地方

銀行の)きらぼし銀行は、2019年上半

期に、取引先の経営悪化に備える、一般貸

引当金の繰入額が、7億4,400万円

と、前年の2.7倍になったが、その理由

のひとつが、融資先の粉飾決算による焦げ

付きである」と報道しています。


この記事の主旨からそれますが、この記事

の書き方は、地方銀行は中小企業融資を伸

ばしてきているが、増加させた融資相手の

会社の粉飾決算を見抜けないために、貸倒

が増加したという書き方になっていること

に、私は疑問を感じます。


まず、粉飾決算とは何かということです

が、「(意図的かどうかは問わず)会社の

実態を表していない決算書」という意味で

あれば、中小企業で粉飾をしていない会社

は少ないと、私は考えています。


なぜなら、中小企業は、負担が大きいなど

の理由から、上場会社のような厳格な経理

処理をしていないので、決算書の正確性は

あまり期待できません。


その結果、意図的に粉飾をしようとしてい

なくても、結果的に粉飾決算になっている

ということは珍しくありません。


そのような観点から、粉飾をしていない、

すなわち、厳格な経理処理をしている中小

企業だけを選んで融資をしていれば、銀行

は融資を伸ばすことは難しいと思います。


そして、前述のきらぼし銀行のような、貸

引当金の積み増しをした銀行の実態は、

倒産した融資相手の会社は、結果として粉

飾をしていたことがわかったということだ

と思います。


だからといって、銀行は、融資相手の会社

の粉飾を見抜くことができなくても仕方な

いということにはなりませんが、銀行の貸

倒が増えた本当の理由は、銀行が融資相手

の会社の粉飾を見抜けなかったからという

ことではなく、結果として、融資の増加率

以上に貸倒率が高かったということだと、

私は考えています。


話をもどすと、記事によれば、地方銀行

融資残高は増加しています。


これは、「果敢な融資を増やすべき」とい

金融庁や世論の期待通りのことを、銀行

が行っている結果だと思います。


ただ、それと同時に貸倒も増えているとい

うことが、この記事の指摘したいことなの

でしょう。


ただ、融資額を増やしつつ、貸倒は増やさ

さないということは、不可能です。


記事を書いた記者は、融資額の増加率以上

に、貸倒額が増えていることは、銀行の審

査能力に問題があるということも指摘した

いのかもしれません。


しかし、現在、銀行が融資を増やしている

対象の会社は、債務者格付けが低い会社が

中心と思われることから、融資の増加率以

上に貸倒が増えることは当然です。


少なくとも、「粉飾を見抜けなかった」と

いう事例はあるとしても、それだけを強調

することは、必ずしも正しい分析とはいえ

ないでしょう。


そして、銀行が融資を増やせば、貸倒も増

えることは当然なので、貸倒をカバーでき

金利で融資を増やせば、銀行の収益は増

加します。


当面は、リスクに見合った融資を増やすこ

とで、銀行の収益基盤に与える影響は少な

いと、私は考えています。


問題は、このリスクに見合った融資契約を

増やせるかどうかだと思います。




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