鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

融資審査は手続きではない

私は、士業の方からもよく融資のご相談を

受けるのですが、特に法律系の士業の方か

らは、「顧問先からご相談を受けたのだ

が、どこがどうなれば融資を受けられるよ

うになるのか」というご質問を受けます。


これだけですと、何を質問されているのか

よく分からないと思いますが、要は、融資

審査を行政手続きなどと同様に、どう要件

が満たされれば承認されるのかということ

を教えて欲しいというご質問のようです。


これに対して、私は、融資審査において、

要件が満たされるかどうかということは、

融資審査のほんの一部にすぎず、大部分は

実際の業況を見て判断している、と回答し

ます。


とはいえ、融資にも、要件を満たすだけで

承認されるものがあります。


その代表例は、住宅ローンなどの、非事業

者向けの融資です。


住宅ローンは、利用しようとする方の源泉

徴収票などから給与収入を確認し、それか

ら返済能力の有無を判断します。


給与所得を得ている人、すなわち、いわゆ

るサラリーマンの方は、所得額が源泉徴収

票などでほぼガラス張りであり、給与所得

額から算出される返済能力も、明確になり

ます。


そこで、ほぼ給与所得から機械的に返済可

能かどうかが判断されます。


(ただし、住宅ローンでは、返済の確実性

のほかに、融資対象物件、すなわち、住宅

やその敷地については、別途、取得価額と

実勢相場に乖離がないか、また不動産に瑕

疵がないかということも審査します)


ただし、住宅ローンの利用者の方が、オー

ナー企業の経営者の方の場合は、その経営

者の源泉徴収票だけでなく、その会社の業

況を判断し、住宅ローンの審査が行われま

す。


つまり、オーナー企業の経営者の方への住

宅ローンの審査は、結果として、その方の

経営する会社への融資と同じ融資審査が行

われることになります。


話を戻して、数字から機械的に返済能力が

計算できるのであれば、どの要件を満たせ

ば融資審査が通るのかということが言える

のですが、事業者向けの融資の審査を行う

ときの主要な資料となる決算書は、別の記

事で私が述べているとおり、必ずしも会社

の実態を正確に反映していないため、事業

に対する融資については、要件を満たして

いるかどうかだけでは判断できません。


ここまで説明してきたことは、特に難しい

ことではないのですが、冒頭に述べたよう

な方が、思い違いをしてしまう原因として

考えられることは、会計に関する知識が乏

しく、会計処理は主観が入る余地があると

いうことを理解していないこと、会社は有

機的な組織によって事業が行われており、

機械的に将来の業績を判断できないという

ことです。


もし、これらのを理解していただいていれ

ば、冒頭のようなご質問をすることは起き

ないでしょう。


今回の記事の結論は、会社の会計情報は、

有機的な事業活動のひとつの側面を、無機

的な数字で表しているに過ぎないので、融

資審査も、無機的な数字だけで行われるの

ではなく、それから類推される有機的な事

業活動の将来を見通して行われるため、単

に、数字で条件を満たしているかどうかだ

けで判断していないということです。

 

 

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