鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

借りない資金繰り

古尾谷未央さんのご著書「借りない資金繰

り」( http://amzn.to/2mX4Jnt )を拝読し

ました。


古尾谷さんは、旧中小企業金融公庫(現在

の日本政策金融公庫)にご勤務の後、コン

サルティング会社を設立し、社長をお務め

の方です。


この本は、なかなか融資を得られないでい

る会社が、それをどうやって乗り切ってい

くかというヒントが豊富に示されている本

です。


いわゆる会計的な説明ではなく、古尾谷さ

んのコンサルティング経験から実例をもと

に書かれている本として、資金繰に困って

いる会社にとっては一読の価値があると思

います。


ところで、古尾谷さんご自身も、かつて、

金融機関に勤務していたときのご自身のこ

とを反省しながら、金融機関の職員は、自

ら会社を経営したことがないので、決算書

を見ても、会計的な視点でしか見る能力が

ないと批判しています。


そして、古尾谷さんは、金融機関の職員も

会計的な視点以外にも、従業員の視点、顧

客の視点、仕入先の視点で決算書を見るこ

とができなければ、融資先の会社を適切に

理解することはできないと述べておられま

す。


すなわち、これは、バランススコアカード

の4つの視点で会社を見ることが必要とい

う指摘で、私もその通りと思います。


私自身も、銀行に勤務していたときは、こ

のことを強く意識しており、決して、会計

的な観点に偏らないように注意していまし

た。


ただ、それでも銀行職員として限界はあり

ました。


やはり、最終的には、会社経営者としての

経験がない限り、本当に経営者の言ってい

ることは理解することは不可能ということ

も感じていました。


ただ、そこは、逆に、銀行職員だからこそ

指摘できる視点を持つようにすることで、

お互いに利点のある議論ができるようにし

たいと考えてきました。


話しを戻して、どうしても、金融機関と融

資を受けようとする会社には、食い違いが

出てきてしまうということです。


ただ、逆に、古尾谷さんは、融資を受けよ

うとする側の問題も多く指摘しています。


とはいっても、同書は、融資を受ける側の

改善のための指南書ですから、そのことが

中心になるのは当然です。


結論としては、ひとつめはピンチを切り抜

けようとする熱意があるかどうか、ふたつ

めはどれだけのノウハウがあるかというこ

とです。


このふたつの具体的な内容については、同

書をお読みいただきたいと思います。


ところで、私もこれまで多くの会社の事業

改善をお手伝いしてきた中で感じることは

例えば、事業改善策を考えることができな

い、または、私から支援を受けることで事

業改善策を考えることができたとしても、

その遂行管理ができない会社が多いという

ことです。


これは、そのような会社の特徴の一つの側

面であり、なぜそうなってしまうかという

と、事業を管理する体制の必要性を感じな

いままに事業を始めてしまい、その結果、

事業運営が成り行きとなり、そして業績が

悪化したということなのでしょう。


例えば、「会社がピンチになったらどうす

る」という質問をされると、多くの会社経

営者の方は「売上を上げる」と回答すると

思いますが、その考えではうまくいくとは

限りません。


なぜなら、売上をとってこられる人は、経

営者ひとりだけかもしれません。


さらに、売上をとってこられたとしても、

それが利益をもたらすかどうかわからずに

受注してしまっているのかもしれません。


経営者の関心が1年以内のことばかりにあ

ると、重要で長期的な課題である後継者や

右腕の育成もしていなかったり、採算の得

られる条件というものが明確になっていな

かったりします。


これは、私の経験で感じるのですが、経営

者が「利益が得られる」と思っていた条件

は、実は採算が合っていなかったというこ

とは少なくありません。


これにはいろいろな要因がありますが、経

営者に会計的な知識がとぼしいと、自社へ

の発注者から経営者がうまくいいくるめら

れているということが少なくないのです。


話しを本題に戻すと、金融機関側に改善す

べきことは多々あります。


それはそれで改善されるべきことなのです

が、融資を受ける側も、金融機関に全面的

に依存するのではなく、仮に、金融機関の

頭が固い場合、それでもきちんと金融機関

を説得できるような能力やノウハウを備え

ておかなければならないということです。


(ただ、このことは、対金融機関だけでは

なく、対顧客、対従業員についても同様の

ことが言えるでしょう)


このようなことを、古尾谷さんの本を読ん

で、改めて感じました。

 

 

 

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