私は事業計画を重視しています。
なぜなら、事業計画なしには経営ができな
いと考えているからです。
と、このように書いても、このことを正面
から否定はされないものの、実際に事業計
画が作成されていない会社や、銀行から依
頼されて渋々作るという会社も少なくない
ようです。
そこで、事業計画を作成することは大切と
いうことを、多くの経営者の方が分かって
いる一方で、なぜそれが実践されないのか
ということについて、考えてみました。
そこで、改めて、事業計画の意義について
確認したいと思います。
会社の事業運営を、航海に例えれば、目的
地は会社の目指すところである経営理念に
該当します。
そして、どのような航路をたどるかという
ことは、事業を進める方法を示す経営戦略
に該当します。
その次に、実際の航海を行うにあたって
は、誰が、何を、いつまでに、どれだけな
どといった、具体的な計画や準備を行いま
すが、このようなことは事業運営において
も行われており、これが事業計画に該当し
ます。
広い海の中を長期間にわたって行われる航
海は、まさにリスクのともなうものである
からこそ、周到な計画と準備が必要です。
これらを欠いて、航海を無事に終えること
は不可能でしょう。
同様に、事業運営を成功させるためには、
きちんとした事業計画が策定され、それに
従った活動が行われなければならないわけ
ですが、冒頭で述べたとおり、それが実践
されていない会社は少なくありません。
その理由について、私がこれまでに見てき
た会社の状況から類推すると、会社を起こ
した創業者が、社長に就くということを起
業の目的にしている、もしくは事業を始め
るということが目的になっているというよ
うに、ゴールとスタートを取り違えている
ということがひとつだと思います。
もうひとつは、将来のことは不確定である
ので、計画を立てる意味がないと考えてい
るというものです。
これは、一見、筋が通っているように思わ
れますが、そもそも、事業がうまく進むと
考えていなければ、事業も始めていない訳
ですから、将来を見通せないという主張に
は矛盾があります。
事業計画に意味がないという主張の裏に
は、「計画に従って事業を進める」という
煩雑なことを避けたいという考えがあるの
であって、これは、ある意味、経営者とし
ての責任を放棄していると言えます。
これに対しては、「事業管理が経営のすべ
てなのか」という疑問もあると思います
が、経営者には事業を黒字にするという最
低限の義務があり、それをコミットすると
いう意味で事業計画は必要です。
もちろん、事業計画を作成すれば、必ず事
業が黒字になるということではありません
が、とはいえ、経営環境の厳しい時代に
あっては、前述の航海の例えにもある通
り、周到な準備なしに事業を黒字に導くこ
とは、見通しが甘いと言わざるを得ませ
ん。
むしろ、利益を得ている会社ほど、精緻な
事業計画を立て、より効率的な事業運営を
目指して邁進しており、その結果が黒字と
なって現れていると言えます。
話しはそれますが、事業計画は立てるもの
の、単に従業員に「ノルマ」を課すだけの
ことしかしないような経営者もいますが、
それは、ノルマだけを与えられた従業員か
ら見れば、数字を割り振るだけの経営者を
頼る必要はなく、そのような経営者の経営
する会社は早晩行き詰るでしょう。
今回の結論は、成り行きで事業を行うこと
だけを考えている経営者にとっては、事業
計画の必要性は感じませんが、成り行きで
事業を行うのであれば、経営者そのものが
不要であるということです。
現在の経営環境では、どのように事業を運
営するかが事業の成否を分けているのであ
り、そのためには計画の立案と遂行管理は
欠かせず、それを通して事業を成功に導く
役割が経営者に与えられています。
このことを認識し、事業計画に基づいた事
業運営を行っていない会社の経営者は、肩
書だけの経営者ということになってしまい
ます。