私はこの記事で、あまりお手本にならない
経営者を取り上げることが多いのですが、
実は、逆に、お手本になる経営者の方もた
くさん知っています。
特に、銀行勤務時には、数百人の経営者の
方とお会いして来たので、どういった経営
をしている方が会社の業績がよいのかとい
うことは、‘ある程度’分かります。
ここで、‘ある程度’と書いたのは、どう
いった特徴が業績の向上につながっている
のかということを明確にすることが難しい
からです。
業績が向上している要因として、いちばん
分かりやすい特徴としては、「●●という
事業をすれば売上が増える」とか、「●●
という方法で営業活動をすれば顧客が増え
る」という、何をすればよいかということ
です。
これは、業績向上とやることの因果関係が
明確です。
ただ、このような何をすればよいかという
方法は、あまり普遍的ではないので、もう
少し対象を広げるために、経営者の方がど
ういった姿勢で会社経営に臨んでいるのか
ということに目を向けてみます。
そうすると、「●●の習慣がある」「●●
という方針で経営している」「いろいろな
ことに興味がある」「決断が速い」「時間
を守る」というものです。
このような特徴は、「自分でもできる」と
いうように対象となる人が増えますが、業
績の向上との因果関係がぼやけてきます。
とはいえ、よいことではあるので、自分も
心がけてみようとする方は少なくないので
すが、やはり定着する人はあまりいないよ
うです。
そこで、どうすればよい姿勢で会社経営に
臨むことができるようになるのかというこ
とに目を向けると、「人に寛容である」
「忍耐強い」「素直である」「目標を達成
しようとする意欲が強い」「能動的に行動
する」「楽観的である」などの人格的な面
のよしあしになります。
そして、このような特徴は、ますます、業
績向上との因果関係は不明確になります。
ただ、経営者の方の人格がよいことは、そ
の方の経営する会社の業績によい影響を与
えるということは、銀行職員でなくても経
験的に理解できるものです。
そこで、「業績を上げるためには、経営者
の方は、何事にも能動的に取り組むことが
大切です」というような助言を受けても、
「当たり前過ぎてありがたくない」と感じ
ることでしょう。
そして、それは、銀行職員も経営コンサル
タントも分かっているので、そのような助
言をすることはほとんどしないでしょう。
では、どうすればよいかというと、「ロー
マは一日にして成らず」という言葉がある
ように、よい会社も一朝一夕で作ることは
できないという前提で経営に臨むしかない
ということです。
これについても「そんなことはいわれなく
ても分かっている。
だから、時間をかけずに業績をよくする方
法を教えてもらいたいといっているのだ」
と考える方も多いでしょう。
ただ、この詳細については別の機会に述べ
たいと思いますが、「業績のよい会社が欲
しい」とだけ考えている経営者の方は、経
営者としての能力を評価されないでしょ
う。
他者から学んだり助言を受けることはして
も、自分なりの方法で「業績のようい会社
を育てる」ことをしなければ、評価される
経営者にはなることができません。
一般的には、自分が経営する会社を評価さ
れることよりも、自分の経営者としての能
力を評価されることを望む方が多いのでは
ないでしょうか?
そのためには、因果関係の薄い要因であっ
ても、それを愚直に実践し、自分なりの業
績向上の手法を見つけ出すところが経営者
の役割であり、その役割を他者に求めてし
まっては、経営者の役割を放棄するに等し
いと私は考えています。