[要旨]
経営者保証解除は、業績のよい会社は、容易に応じてもらえます。したがって、業績を向上させることが、経営者保証解除の最善の方法と考えられます。もし、業績がよくないときは、事業改善のための計画を銀行に伝え、高い当事者意識をもって経営に望んでいることを伝えると、より早い段階で経営者保証解除に応じてもらえるようになるでしょう。
[本文]
私は、ときどき、経営者保証の解除についてご相談を受けるのですが、経営者保証の解除の考え方について、誤って理解していると思われる方もいるので、ここで、改めて説明したいと思います。経営者保証ガイドラインは、銀行に対して経営者保証に依存しない融資を増加するためにつくられたガイドラインなのですが、一方で、融資を受けている側にも次のような努力を求められています。
その努力とは、(1)会社と経営者の間で資産などを明確に区分すること、(2)会社の財務基盤を強化すること、(3)財務状況の適時適切な情報開示を行うことの3つです。裏を返せば、表現がやや乱暴ですが、この3つが満たされていなければ、銀行が経営者保証を解除しなくても妥当であるということになります。
ただ、実務上は、業績のよい会社は、融資が返済されない懸念が少ないことから、経営者保証は求められないようです。したがって、経営者保証を解除してもらうには、業績を改善すればよいということになります。したがって、「どうすれば経営者保証を解除してもらえるのか」という相談をしてくる経営者の方は、会社の業績がよくないから解除してもらえないと考えられます。
もちろん、銀行は、融資相手の会社の業績がよくないという理由だけで、経営者保証の解除に応じなくてよいということにはなりませんが、経営者の方も経営者保証解除にとらわれすぎることも望ましくないと考えられます。というのは、経営者保証には規律付けの意味合いが強いからです。会社の業績がよくないのに、経営者は保証人になりたがらないという状況は、融資をしている銀行からみると、その経営者は経営に真剣に臨んでいるのかという点に疑問を感じることになります。
繰り返しになりますが、業績のよくない会社の経営者が、経営者保証の解除を望むことが直ちに問題とは言えません。そして、それと同時に、どのように会社の業績を改善していくのかということも銀行に伝え、さらにそれを実践して、経過報告を行っていくことで、銀行からの信頼を得られるようになります。それが、経営者保証解除が実現する近道になるでしょう。
2022/2/1 No.1875