ありていに言えば、私はこれまで正攻法で
ない方法を使ってでも、融資を受けらえる
よう銀行を説得して欲しいという依頼を
受けたことが何度かあります。
結論としては、いずれも断りました。
そのため、私を評価しない人も少なくない
ようです。
では、私はなぜ正攻法でしか仕事を受け
ないかというと、最も大きな理由は、
それは、依頼者のためにもならないという
ことです。
正攻法ではなく、奇策を使うという方法は
我田引水的であり、それは、依頼者の
信用をなくし、ますます窮地に追い込ま
れてしまいます。
と、ここまで書いて、まったくの建前
ばかりを書いていると思われる方が
多いでしょう。
正直なところ、私も、銀行勤務時代は、
割り当てらえた目標を達成するために
何度もずるをしたいという誘惑にかられた
ことがあります。
ですから、「固いことをいわないで…」と
言いたくなる気持ちもわかります。
しかし、「固いことをいわないで…」と
言わせてもらえなかった経験もあり
ます。
いわゆる「山一ショック」のときに、
いくつか信用不安となった銀行の中に
私が勤務していた銀行がはいって
いました。
具体的には、預金を引き出す顧客が
店の前に列を作りました。
当時は、仮に銀行が倒産しても、預金
保険で全額(現在は1千万円が上限)が
保護されていたにもかかわらず、預金を
引き出さないと不安に感じる方がたくさん
いました。
とはいえ、預金者の方が不安を感じたのは
そのような不安を感じさせる状態にあった
銀行に原因があり、預金者の方たちを批判
することは適切ではありません。
このとき、「『固いことをいわないで…』
と預金者の方に言えたら…」と思ったの
ですが、同時に、それは意味がないという
ことも感じました。
ここから先は、意見が分かれるところ
ですが、人は他人には清廉さを求めるもの
です。
だから、よいか悪いかは別として、多くの
人を相手にする事業に携わる人たちは、
清廉さを心がけなければならないと私は
考えています。
でも、その一方で、だからこそ、事業に
まじめに取り組んでいる人は、他の人から
尊敬の対象になるのだというようにも
思います。