最初は、国際会計基準について書きます。
違いのひとつは、日本の会計基準が細則
主義であるのに対し、国際会計基準は
原則主義であるということです。
細則主義というのは、細部まで規則で
定めるという考え方です。
そのため、細則主義の会計基準では、
会社は、会計基準のとおりに会計処理を
行えばよいということになるものの、
形式的なことにこだわらなけれなならない
という弊害もあります。
一方、原則主義というのは、原則だけを
定めるという考え方です。
原則主義の会計基準では、会社は、原則を
理解した上で、細かい部分は自ら判断して
会計処理をしなければなりませんが、
形式にとらわれず会社の状況に応じた
会計処理ができるようになります。
ところで、この、細則主義と原則主義の
考え方は、事業運営にもあてはまることが
あると、私は考えています。
ユニクロを運営しているファースト
リテイリングの柳井社長は、「一勝九敗」
( http://amzn.to/2rTLBeX )という本の
中で、「マニュアルは従業員をダメに
する」と述べておられます。
これは、マニュアルで細かいことを
決めると、従業員はマニュアル通りに
動こうとし、自ら考えて行動しなくなる
という弊害を指摘しているものです。
そこで、会社は大まかな方針のみを示し、
従業員は自らの行動がそれに沿っているか
どうかを判断しながら行動しなければ
ならないと柳内さんは考えています。
この考え方は、ファーストリテイリング
以外にも、多くの会社が採り入れて
います。
会社の信念を記載したカードである、
「クレド」をすべての従業員が持っている
ことで有名なリッツカールトンホテルが
そのひとつです。
このような会社は、マニュアルではなく、
価値観で従業員は行動しています。
この、価値観をすべての役員・従業員で
共有し、それに基づいて行動することを
価値前提と言います。
これに対して、マニュアルなど形式的な
規則どおりに行動したり、前例を踏襲
して行動することを事実前提と言います。
そして、役員や従業員は、事実前提で
行動せず、価値前提で行動するように
することが大切です。
と、書いたものの、このことは、私が
述べるまでもなく、すでに多くの
コンサルタントがお話しされていたり、
書籍で述べられていたりします。
しかしながら、事業の現場で会社の支援を
しているものとして、「あすからは価値
前提で行動しましょう」と社長が従業員に
対して呼び掛けたとしても、一朝一夕で
従業員の方の行動が変わることは、実際
には難しいということを実感しています。
そうではあるものの、やはり、価値前提で
従業員が行動する会社は、業績がよいと
いうことも間違いありません。
難しいからといって、いつまでも、
従業員の方がマニュアルで動く状態に
しておくことは、避けるべきでしょう。
価値前提で従業員が行動するようになる
にはどうすればよいのかという具体的な
手法をここで述べることは割愛しますが、
私は、その難しいことを実践することが
経営者にとって避けられない役割であると
考えています。
そして、もうひとつ大切なことがあり
ます。
規則もない会社は、規則が要らない会社に
なることはできないということです。
就業規則など、法令で定められた規則は
あるものの、経理規定、稟議規定、職務
分掌規程、職務権限規程、販売管理規定、
与信管理規定など、会社で組織的に統一
して活動するために必要な規定は定め
られていない会社が多いようです。
まず、基本的な規則を作り、それに従って
従業員の方が行動できるようになってから
でなければ、規則に頼らない行動ができる
ような人材を育成することはできません。
ちょっと気の遠くなるような手順ですが、
このような人材育成のステップを踏む会社
こそ、底力の大きな会社になると、私は
考えています。