鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

手段と目的の取り違い

先日、正しい理解をしていないために、

バランス・スコア・カード(BSC)に

対して批判的な人とお話をしました。


その方の話の内容はここでは記載しません

が、こちら(→ https://goo.gl/02Pz09 )

カルビーさんの失敗事例のようなことを

行っていたようです。


カルビーさんの失敗のひとつめは、KPI

(Key Performance Indicator 重要業績

評価指標)を、3,000個設定したこと

です。


KPIの詳細については、後述しますが、

KPIでなくても、管理する数値目標が

3,000もあったら、数値管理に大きな

労力がかかり、事業そのものがうまく

行かないことは明らかでしょう。


ふたつめは、KPIの勘違いです。


カルビーさんの例では、「営業担当者の

KPIの1つである店頭鮮度率を改善

するために、自分の担当店舗にある古い

商品を見つけて買い取る」ということを

していた営業担当者がいたそうです。


この事例そのものは、売上を増加させる

ために店頭鮮度率をKPIとして設定

したが、それを意図的に変更したことを

批判しています。


このことそのものも問題ですが、私が

問題と考えたことは、売上を増やす

ために、店頭に古い商品がないようにする

という戦略を取り、その戦略が奏功して

いるかどうかを測る指標として、店頭鮮度

率を設定していたとすれば、営業担当者の

方が実施しなければならないことは、

店頭鮮度率を高めることではなく、店頭

鮮度率の高さが売上の増加に貢献して

いるかどうかを確かめるということです。


もちろん、店頭に古い商品がないことが

望ましいということには、間違いはあり

ません。


しかし、それがなぜ望ましいのかという

理由は、KPIに設定されたからでは

なく、端的に言えば、在庫ロスを減らす

ためです。


BSCでは、実施する戦略そのものが

管理の対象であり、その戦略の達成度を

測るための指標がKPIです。


BSCでとる戦略は、もしかしたら、

最終的な目標を達成することにあまり

貢献していなかもしれません。


また、KPIは、実施している戦略の

達成状況を正しく反映していないかも

しれません。


これらの因果関係が強いか弱いかという

ことを、PDCAを行う中で確認し、

弱いものについては改善を加えていく

ということを繰り返していきます。


このことを理解できていないと、BSCを

導入しても、単に割り当てられたKPIを

達成させればよいという安易な行動を

とってしまいます。


ここまでのことをひとことで言えば、

手段と目的を取り違えているという

ことです。


とはいえ、手段と目的の取り違いは、

しばしば起きています。


この手段と目的の取り違いが起きる

原因は、さまざまなものがありますが、

会社でそのようなことが起きている

場合は、経営者の方が、きちんと従業員の

方に、戦略の意図を伝えていなかったり、

従業員の方の習熟度が低いまま、難易度の

高いことを行わせようとすることが考え

られます。


もちろん、事業がうまく行かないことの

責任が、すべて経営者の方に帰するわけ

ではありませんが、結果責任を負わな

ければならない経営者としては、単に

「指示はしたけれど従業員がその通りに

やらなかった」という言い訳をすることは

できません。


BSCという管理ツールを導入した場合、

単に「BSCを導入する」と伝えるだけ

ではなく、従業員の方にそのツールの使い

方を深く理解されるまで説明したり、

きちんと実践できるためのスキルを身に

付けさせることは、経営者の方が避けられ

ない役割です。

 

 

 

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