鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

事業計画は誰のために作成するのか?

[要旨]

経営者の軸足は、事業の遂行管理に置くべきであり、事業計画を作成して事業運営に臨むべきであるということは、多くの方が理解しているものの、中小企業では、経営者の方の多くが、事業そのものに大きな関心があり、事業運営はなおざりになりがちなので、注意が必要です。


[本文]

先日、CLUBHOUSEで知り合った経営者の方から、事業計画についてお話をききました。その方は、一昨年、小規模事業者持続化補助金を申請し、採択され、補助金を受け取ることができたのですが、補助金の申請のときに作成した事業計画がとても役立ったとお話しておられました。

すなわち、補助対象の事業計画が採択されてから、補助対象事業を開始すると、その事業を計画通りに遂行するために、日々、事業計画書と向き合うことになります。そうすると、自らの役割が事業遂行の管理であること、そのために事業計画書が必要になること、そして、事業計画書は、銀行などから頼まれて作成するのではなく、まず、経営者が自らのために作成するものであるということが理解できたということでした。

このことは、ここで改めて指摘するまでもなく、ほとんどの方が納得することであると思いますが、中小企業では、実際に事業計画を作成している会社は、3割に満たないと、私は経験的に感じています。そうなってしまう最大の要因は、経営者の方が、計画の遂行管理をすることが、自らの最大の役割と考えていないからだと思います。

中小企業の経営者の方の多くは、営業活動を行うこと、製品を製造することなど、事業そのものに大きな関心が向いており、組織的な事業運営への関心は低いようです。そして、「机の上で数字を見ることより、現場に出て、生産に直結する活動をすることの方が、会社の発展になる」と考えておられるのだと思います。

でも、長期的に見れば、計画に基づいた事業運営は、成行的に事業に臨んでいる会社より、着実に成長します。前述の経営者の方は、それを実感したのでしょう。私は、次に出版予定の本のテーマは事業計画なのですが、それを出版する理由は、このような理由があるからです。いま、事業運営に閉塞感を感じている経営者の方は、事業計画の活用を強くお薦めします。

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事業再構築補助金と専門家の支援

[要旨]

事業再構築補助金の申請あたっては、専門家の支援を受けようとする方も少なくありませんが、採択されるまでの支援だけでなく、事業計画遂行、補助金申請までの支援を受けることが望ましいと、私は考えています。


[本文]

最近、事業再構築補助金について、よく、ご相談を受けるのですが、その内容について、シェアしたいと思います。事業再構築補助金の申請は、専門的な知識が必要なので、多くの方は、専門家の支援が欲しいと感じているようです。そこで、支援を受ける時は、どのような専門家が望ましいいのかということについて相談されるのですが、私は、補助金が受給できるまで支援をしてもらえる専門家が望ましいと回答しています。

ところで、私は、補助金を受けるには、3つのポイントがあると考えています。ひとつは、事業計画が採択されること、ふたつめは、採択後に、事業計画が着実に遂行されること、みっつめは、補助金の請求手続きが正確に行われることです。補助金については、採択されればそれをもらえると理解している方もいるのですが、採択された後、事業計画が計画通りに進まなかったり、申請手続きに書類などのもれがあったりすると、採択された金額の一部、または、全額をもらえなくなってしまいます。

したがって、前述の通り、補助金の請求までを支援してくれる専門家に依頼することが望ましいと、私は回答しています。ちなみに、専門家の方の中には、採択されるまでは熱心に支援をしてくれるものの、成功報酬を受け取った後は、まったく支援しないという方もいるようです。そうすると、依頼した側は、報酬は払ったものの、前述のように、補助事業が計画通りに進まなかったり、手続きにもれがあったりしたときに、補助金がもらえない、または、減額される結果となることになりかねません。

また、こちらは希な例ですが、専門家が、採択されることだけに気がとられ、現実には、実行が難しい事業計画で申請してしまうこともあるようです。したがって、前述のように、補助金が確実に受け取れるまで支援してくれる専門家に支援を仰ぐことをお薦めします。

確かに、申請だけ支援を仰ぐことの方が、専門家報酬は少なくてすみます。また、補助事業の遂行管理や、補助金の申請の支援に関する専門家への報酬は、補助金の対象にはなりません。それでも、確実に補助金を受け取れるようにすることの方が、補助金額が数千万円にもなる事業再構築補助金の活用にあたっては、優先すべきと、私は考えています。

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銀行は事業計画書を作成しない

[要旨]

事業再構築補助金の申請要件には、「補助金額が3,000万円を超える案件は、(事業計画を)金融機関も参加して策定する」という要件がありますが、これは、融資をする立場として、事業計画書に妥当性があることを、銀行に確認してもらうという意味合いであり、事業計画を銀行に作成してもらうことが要件ということではないと考えられます。


[本文]

前回、事業再構築補助金の申請要件には、「補助金額が3,000万円を超える案件は、(事業計画を)金融機関も参加して策定する」というものがあるとご説明しました。この説明を読むと、「3,000万円を超える案件は、銀行に事業計画の作成を依頼しなければならない」と受け止める方もいると思います。しかし、実際には、銀行に事業再構築補助金の申請のための事業計画書の作成を依頼しても、応じてもらえないと思います。

その理由としては、次のようなものが考えられます。ひとつは、物理的に、銀行に、事業計画書を作成するための人的な余力がないということです。ふたつめは、仮に、余力があったとしても、事業再構築補助金の申請に関するノウハウは少ないということです。

みっつめは、仮に、事業再構築補助金の申請に関するノウハウが銀行にあったとしても、申請して採択されなかったときの責任を避けたいと、銀行が考える可能性があるからです。したがって、現実的には、事業再構築補助金の申請をしようとする会社は、まず、銀行以外の認定経営革新等支援機関などに支援をもらいながら、事業計画書を作成し、それを、融資をする立場としての銀行に、問題がないか見てもらうということになると思われます。

そこで、経済産業省の資料には、「金融機関とともに(事業計画書を)策定する」ではなく、「金融機関も参加して(事業計画書を)策定する」という言い回しになっているのでしょう。繰り返しになりますが、経済産業省は、銀行に融資ができる事業計画になっているかどうかを確認してもらってから、事業再構築補助金の申請してもらいたいということなのでしょう。

ただし、ここまで銀行の支援について否定的な説明を書いてきましたが、地域金融機関の中には、過去に、補助金の申請の支援に積極的なところもありました。(ご参考→ https://bit.ly/3aENPnN )このような地域金融機関は、事業再構築補助金の申請にも積極的に参加してくれる可能性もありますので、もし、このような地域金融機関が近くにあれば、心強い味方になるでしょう。

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事業再構築補助金申請への銀行の関わり

[要旨]

補助金額が3,000万円を超える事業再構築補助金の申請は、事業計画作成の段階から、銀行の協力を得る必要があります。それは、事実上の、補助金申請の審査の第一段階になっていますので、早めに銀行へ協力を依頼することが大切です。


[本文]

最近、事業再構築補助金に関する銀行の支援についてきかれることがあるので、ここでシェアしたいと思います。ご質問というのは、事業再構築補助金の申請要件に、「補助金額が3,000万円を超える案件は、金融機関も参加して策定する」というものがあり、これはどういうことなのかということについてです。

これについては、なぜ、銀行が関わるのかというと、明確な根拠は示されていませんが、私の想像では、補助金額が3,000万円を超えるような補助事業は規模が大きいので、それを遂行できる見込みが高く、銀行も資金面での支援ができる事業計画であるということを、申請前に判断しておいてもらいたいという意図があるのだと思います。

したがって、3,000万円を超える補助金額を申請することを考えている方は、早めに取引銀行に相談することが望ましいと思います。そこで、これについて、私と面識のある銀行の支店長のAさんに質問してみました。Aさんによれば、銀行が関わって事業再構築補助金の申請をするからには、信頼できる会社でなければ、協力はできないということでした。これは、ある意味、当然でしょう。

だからこそ、前述のように、補助金を申請する会社を、前もって銀行に目利きしてもらい、それを、事実上の、事業再構築補助金の審査の第一段階にしていると言えるでしょう。とはいえ、日ごろから、銀行と緊密に接触している会社であれば、特に問題なく協力をしてもらえるでしょう。一方、融資取引がない銀行や、融資取引があっても、あまり緊密な関係がない銀行へは、協力を求めても、直ちにそれに応じてもらえることは難しいでしょう。

とはいえ、私は、過去に、ものづくり補助金の採択を受けた会社から、つなぎ融資のご相談を受け、ご支援をした結果、その会社と融資取引のない銀行から、つなぎ融資の承認を得ることができたという経験があります。もし、事業再構築補助金の申請にあたり、銀行からどのように協力を得ればよいのか思案している方は、私のような専門家に、早めにご相談されることをお薦めします。

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ソーシャルビジネスに対する融資審査

[要旨]

ソーシャルビジネスを営む会社は、融資承認は得やすくなると思われますが、融資審査の最大のポイントは利益が見込めるかどうかなので、利益の見込みが少ない場合、融資承認を得られないこともあります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、Clubhouseでご相談を受けた、ご相談の内容についてシェアしたいと思います。具体的には、ソーシャルビジネス(社会問題の解決を目的とする収益事業)を行う場合は、銀行が融資を行いやすいのかというご相談です。結論としては、融資判断に有利に働くものの、その影響はあまり大きくないということです。銀行は、融資の判断をするとき、融資をする会社の事業の公共性も加味して判断します。

したがって、ソーシャルビジネスは、融資審査において有利です。ただ、融資承認の決め手となる最も大きな要因は、利益が得られるかどうかなので、ソーシャルビジネスであっても、利益が見込めそうでなければ、融資の承認は得にくくなるでしょう。また、これまで、自社が、銀行から融資をなかなか受けられないでいるとき、事業をソーシャルビジネスに転換すれば、融資を受けられるようになるかというと、業種を変えるとはいえ、それも、これまでの実績が重視されるので、簡単に、融資を得られるようになるとは考えにくいでしょう。

ちなみに、私は、ソーシャルビジネスを事業にする会社が増えていくことは望ましいと考えていますが、ソーシャルビジネスを営んでいる会社だけが社会貢献をしているとは考えていません。いわゆる、一般の事業を営んでいる会社であっても、利益を出して納税したり、従業員の方を雇用していたりすることは、大きな社会貢献であると考えています。多くの銀行も、利益をあげ、従業員の雇用を維持している会社は評価していますので、ソーシャルビジネスを営まないと評価されないと考えることは適切ではないと、思っています。

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会社が倒産すると社長は家を失うのか?

[要旨]

経営者の方は、会社が融資を返済できなくなっても、自宅を失いたくないと考え、経営者保証を外したいと考え、それはもっともなものです。しかし、実態としては、会社の業況が悪化したときは、経営者の方が自宅を持っている場合、銀行からそれを担保として提供することを求められるので、自宅を手放さずにすむ例はあまりないでしょう。


[本文]

今回も、前回に引き続き、Clubhouseでご相談を受けた、経営者保証に関するご相談の内容についてシェアしたいと思います。経営者保証をせずに融資を受けたいという方は、もし、会社が融資を返済できなくなったとき、保証人である経営者の方が、自宅などの資産を失ってしまうようなことは避けたいと考えるからだと思います。そう考えることについてはもっともだと思います。

ただ、経営者の自宅を、会社の融資の担保として契約(普通抵当権契約、または、根抵当権契約)している場合、会社が融資の返済をできなくなったときは、銀行は、担保物件を処分して融資の返済にあてることになりますので、自宅はあきらめざるを得ないでしょう。本題からそれますが、銀行は、一般的に、不動産担保の担保物件の所有者に対して、担保契約を行うと同時に、連帯保証人になることを求めます。担保提供者が連帯保証人ではないということは、極めて例外的です。詳しくは、私の過去の記事をご参照ください。

話を戻すと、では、自宅を担保にせず、単に、連帯保証契約しかしていない経営者は、会社が融資を返済できなくなった場合、自宅を失うことになるのかというと、必ずしもそうとは限りません。経営者保証ガイドラインでは、連帯保証人に会社の融資の返済を求めるときは、ある程度、連帯保証人の手許に残す資産について配慮するよう求めており、その中には、華美でないという前提条件がありますが、自宅も含めることとされています。(経営者保証ガイドライン10ページ )

だからといって、すべての事例で、経営者が自宅を失わずにすむということでもありません。とはいえ、経営者が担保に入っていない自宅を持ちつつも、会社が融資を返済できなくなるということは、実は、ほとんどないと思っています。なぜなら、融資の返済ができなくなる前の段階で、会社の業績が悪化した会社は、資金繰がきつくなり、そのような中で銀行から融資を受けようとする際に、社長に自宅を担保提供するよう要請することが多いからです。

したがって、会社が融資の返済ができなくなったとき、経営者の方が自宅を失わないことは珍しいと、私は考えています。これについては、経営者の方の負担が大きいと感じる方がいるかもしれませんが、銀行が、業況が苦しい会社に融資をする場合は、当事者である経営者の方に負担を求めることは、それほど無理筋とは言えないでしょう。したがって、経営者保証を外せば、経営者の方が自宅を失わないようになるかというと、実態として、あまり意味がないと考えられます。

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融資の連帯保証契約は規律づけ

[要旨]

銀行が融資をしている会社の経営者に連帯保証人になってもらう理由には、経営者の方に、融資返済に忠実に努めて欲しいという規律づけの意味合いがあるので、事業が組織的に行われているなど、銀行から高い信頼を得られる状態にならなければ、解除に応じてもらうことは難しいでしょう。


[本文]

今回も、Clubhouseでご相談を受けた内容なのですが、融資取引に関する経営者保証の解除についてシェアしたいと思います。銀行から融資を受けている会社の経営者の方の多くは、経営者保証を解除して欲しいと考える方は多いようです。そのことは積極的に行うべきと私も考えるのですが、経営者保証について正しく認識していないと、解除の要請に応じてもらうことは時間がかかると思います。

というのは、経営者保証の解除に、手続きだけでアプローチしようと考える方が多いようです。すなわち、民法の改正や、経営者保証ガイドラインで、経営者保証に関してどのように規定されているのかということにのみ目を向けてしまいがちということですう。それよりも、なぜ、銀行がなぜ経営者保証を求めるのかという意義について理解した上で、解除の要請を行うことの方が、効果的です。

では、具体的にはどうすればよいのかというと、まず、経営者保証は、形式的には経営者に対して、融資を連帯して返済することを求めるものですが、実態は、規律づけをするという意味合いが強いということを理解することです。規律づけとは、「銀行が、貴社に期待をして融資を行いますから、経営者として真摯に事業の発展と、融資の返済に努めてください」という要請に対し、経営者の方がそれに応じたということが客観的に分かるようにしておくということです。

そこで、事業が順調に発展していき、会社と経営者個人では、きちんと財布が分かれている状態になっていること、事業運営は組織的に行われてるようになっていることなどが銀行に伝わる状態になれば、銀行も経営者保証は不要と判断できるようになります。このような、銀行に、より高い信頼を得られるような状況を示すことができないうちは、経営者保証の解除の要請をしても、銀行としては、それに応じようとすることは難しいでしょう。

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