鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

結果よりもプロセス

先日、イエローハット創業者の鍵山秀三郎

さんのメールマガジンに、次のようなこと

が書かれていました。


「結果主義は『終わりよければすべてよ

し』という考えです。


この考え方には、誠意が感じられません。


事実、結果を追うあまりあの手この手を使

い、ついには犯罪まで犯すようになりま

す。(中略)


一方、プロセス主義は方法と手段に重きを

置いて、その過程を大切にする生き方で

す」


私も、鍵山さんと同様に、プロセスは大切

と考えています。


その一方で、私は、「経営者は結果責任

負う」とも述べています。


この、禅問答のような対立した考え方につ

いて、深く掘り下げて述べることもできる

のですが、ここでは、文字数の兼ね合いか

ら、もっと簡単な、プロセス管理の入り口

のことについて述べたいと思います。


このように述べると失礼になるかもしれま

せんが、表面的にはプロセスが大切と述べ

ている経営者(私も含まれます)はたくさ

んいますが、実際にプロセスまで管理でき

ている人の割合はあまり高くないと、私は

思っています。


これを言い換えれば、組織的な事業活動を

確立しようとしている人はあまりいないと

いうことです。


これについては、これまで何度か述べてき

たので、ここで改めて述べることは致しま

せん。


(ご参考→ https://goo.gl/hbqYhF


このプロセスを確立する活動は、実は、地

味な活動であり、難易度も高い活動でもあ

ることから、避けられがちです。


でも、その、なかなか出口が見えない活動

に、どれだけ取り組むことができるかが、

本当に成功する経営者かどうかの試金石に

なると私は考えています。


もちろん、成行管理で事業がうまくいくこ

ともありますが、その成功要因を把握でき

なければ、成功した状態を持続させること

はできません。


会社を継続して発展させる役割こそが、最

も経営者の役割らしい役割だと思います。

 

 

 

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リースに関する誤解

私の著書に、「図解でわかるリースの実務

いちばん最初に読む本」という本があるこ

とから、私に対してはリースに関するご質

問も寄せられることが多いのですが、その

中で、何人かの方から、誤解が前提となっ

てご質問をしておられるということがあっ

たので、今回はそのご質問について触れた

いと思います。


(ご参考→ http://amzn.to/1o1VluB


誤解が前提となっているご質問というの

は、「リース物件は賃借物件なので、リー

スをたくさん使うと、リース物件の管理や

維持のための手間が増えてしまわないか」

というものです。


この質問に対する回答を述べる前に、どの

ようなことを誤解しているのかということ

について述べたいと思います。


リース契約は、日本では、法的には賃貸借

契約であり、リース物件も賃借物です。


しかし、同じ賃貸借であるレンタルとは、

次のような点で異なります。


(1)リース物件は、ユーザーが指定した

ものに対してリース会社がサプライヤー

代金を支払った後、サプライヤーからユー

ザーへ直接納品されること。


(2)リース物件の購入代金と、金利・手

数料相当額の全額は、リースユーザーがす

べて単独でリース料として負担すること。


(3)リース契約は、中途解約ができない

こと。


リースには、このような特徴があることか

ら、法的には賃貸借契約であっても、経済

的な効果は、リース物件相当額をリース会

社がユーザーに融資したことと同じことに

なります。


そのため、リース会計基準では、リースに

よってリース物件を調達したときは、リー

ス物件相当額を自社の資産として計上する

こととなっています。


このように、リース物件は、銀行から融資

を受けて設備を購入したときと、実質的に

は変わらないので、リース物件も自社物件

と同等のものと考えても問題ないというこ

とです。


そして、前述のご質問者の方が誤解をして

いるというのは、融資を受けて設備を調達

したときよりも、リースによって設備を調

達したときの方が、手間が大きいというこ

とです。


確かに、自己資金であれ、融資であれ、

リースであれ、どのような手段で設備を調

達しても、その設備がきちんと存在してい

るかということは、会社の決算日には確認

を行う必要があるし、設備を使っているう

ちに、故障の修理をしたりメンテナンスを

行うという手間は発生します。


しかし、それが、自己資金や融資によって

調達したときよりも、リースで調達したと

きの方が、手間が大きくなることはありま

せん。


これが、前述の質問への回答です。


確かに、リース契約は、法的には賃貸借契

約であるのに、会計上は融資を受けて購入

したものとして処理されるために、わかり

にいという面はあります。


ただ、法的に賃貸借契約であるということ

以外は、自社で購入した場合と同じと考え

ていただいて問題ありません。


このように述べると、融資ではなく、リー

スを利用するメリットは何なのかという疑

問を持たれる方もいらっしゃると思います

が、それは、ぜひ、好評により4回の版を

重ねた拙著( http://amzn.to/1o1VluB )を

お読みいただいて解決していただければと

思います。

 

 

 

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10年後に残る会社は30%ではない

私が、かつて、ある社会保険労務士の方に

社会保険労務士になるには、合格率が5

%前後の難しい試験に合格しなければなら

ないんですよね」と質問ししたところ、

「確かに試験の合格率は表面的には5%程

度かもしれませんが、受験者の中にはあま

り勉強せずに、単に経験するためだけに受

験する人も相当いるので、ちゃんと勉強し

た人だけで計算した実質的な合格率はもっ

と高いと思います」と返答されたことがあ

ります。


私は、この方の指摘がどれほど正しいかは

分からないのですが、多少はそういう面は

あると思います。


ところで、「%」の話になると、私は、起

業して10年後に生存している会社の割合

のことを思い浮かべます。


すなわち、「起業して10年後に生き残っ

ている会社は30%」ということを、よく

耳にします。


とはいえ、この30%という数値の根拠を

探しても、なかなか見つかりません。


中小企業白書2017年版のコラム2-1

-2には、起業後5年までの生存率のグラ

フが載っていますが、これによれば、5年

後の生存率は、81.7%と、結構、高い

数値になっています。


(ご参考→ https://goo.gl/2iPEVs


仮に、生存率が6年目以降は毎年5%ずつ

下がって行くとすれば、10年後の生存率

は55%くらいと推測できるでしょう。


では、10年後の生存率が、仮に、30%

や55%として、これがどうなのかという

と、私の肌間隔では低いと思っています。


というのは、会社経営の定石を踏んでいる

会社は、もっと長い期間、事業を続けてい

るからです。


これを言い換えれば、成り行きで事業を営

んでいたり、自己流で事業を営んでいる会

社は、当然のことながら、生存率は高くあ

りません。


客観的な根拠は示すことはできませんが、

きちんと体制を整えている会社は、そう簡

単に廃業や倒産することはありません。


すなわち、冒頭で、社会保険労務士の試験

で、きちんと勉強している人だけで見れば

合格率が高くなるということと同様に、起

業も、定石を踏んでいる会社だけで見れば

生存率は高いということが、今回の記事の

結論です。


もちろん、起業する人は、自分の思い通り

の事業展開をしたいから起業するのだと思

いますが、マネジメントスキルが備わって

いない方については、スキルが高くなるま

では、経験を積むことに専念すべきと私は

考えています。

 

 

 

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ビジネスモデルの成功の要因

京都市にある、国産牛ステーキ丼専門店、

「佰食屋(ひゃくしょくや)」を運営して

いる株式会社minittsの社長の、中

村朱美さんのインタビュー記事を読みまし

た。


(ご参考→ https://goo.gl/v7pCQn


中村さんの考え方はすばらしく、ここで、

あえて私が批評するまでもないものと思っ

ています。


ただし、記事の中で、ひとつ気になったこ

とがあったので、それについて触れたいと

思います。


中村さんは、佰食屋を開店する2か月前に

ビジネスプランコンテストに出て、審査員

の方々に酷評されたそうです。


私はその場にいないので、酷評された理由

は分からないのですが、仮に、私が審査員

であった場合、中村さんのビジネスプラン

は実現しないのではないかと考えたと思い

ます。


現在、それは実現されているものの、お店

の名前のとおり、100食を売ったら、そ

こで店を閉めて残業せずに帰るという発想

は、毎日100食必ず売れるということが

前提になります。


ところが、私は、残念ながら、佰食屋さん

は例外的で、目標とする売上を得ることが

できないでいる飲食店の方が、大多数では

ないかと思っています。


そこで、目標販売数を販売したら帰るとい

う発想自体は否定できないものの、目標販

売数を売れるかどうかという前提が明確で

なければ、そのビジネスプランの実現は難

しいと考えることが一般的ではないかと、

私は考えています。


そもそも、目標販売数が売れなければ、そ

れを達成させるための活動が必要になり、

なかなか帰ることができなかったり、事業

が赤字になったりしてしまいます。

 

今回の記事の結論は、ビジネスモデルを成

功させるには、目標販売数以上の売上が得

られるだけの商品の魅力が前提になるとい

うことです。


単にお店を開いただけとか、ビジネスモデ

ルを考えただけでは成功はしません。

 

 

 

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まとめて融資を申し込むと成功しない

私がよく受けるご相談に、まとまった金額

の融資を受けるにはどうすればよいかとい

うものがあります。


このようなご相談を受けた時、私は、その

ようなことはしないようにすることをお薦

めしています。


なぜなら、大きな金額になるほど、融資の

承認が得にくくなるからです。


そこで、そのようなご相談者さまには、承

認を得ることを最優先して、必要最低限の

融資を申請するようお薦めしています。


例えば、本当は、500万円の融資を受け

れば、当座の資金繰は間に合うところを、

一度に1,000万円の融資を申請したた

めに融資を断られてしまったら、本当に必

要な500万円の融資さえ受けることがで

きなくなります。


では、そのような経営者の方は、なぜ、ま

とまった金額の融資を受けたいと考えるの

かというと、銀行への融資申し込みの回数

を減らしたいと考えているからだと思いま

す。


さらに、なぜ、融資申し込みの回数を減ら

したいのかというと、労力がかかるからと

も言えるのですが、実は、月次決算をして

いる会社は、融資の申し込みの労力は比較

的少なく、金額を何回かに分けて融資を申

し込むことをあまり面倒とは感じません。


これを言い換えると、普段から自社の業況

を確認していない会社にとって、融資申し

込みの回数が増えると、その度に、銀行に

説明するために、わざわざ自社の状況を調

べなければならなくなる、ということにな

ります。


そして、そのような自社の事業を成り行き

でしか管理していない会社は、銀行にとっ

ては、ますます融資を避けたい相手と判断

てしまいかねません。


繰り返しになりますが、「融資の申し込み

が面倒」と考えている経営者は、銀行から

みると、管理能力のない経営者と映ってし

まうということに注意が必要でしょう。

 

 

 

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CSV経営

最近、CSV経営という言葉を聴くように

なりました。


CSVとは、Creating Shar

ed Valueの略語で、「共通価値の

創造」などと訳されています。


これは、米国の経営学者のポーターによっ

て、2006年に提唱された概念です。


CSVは、従来からあったCSR(企業の

社会的責任)と対比されて、よく説明され

ます。


すなわち、CSRは、会社の営利活動とは

直接結び付かないが、CSVは、会社の営

利活動に組み込まれるというものです。


ただし、単なる営利活動と異なるのは、共

通価値があるということで、共通価値とは

社会的な価値と会社の価値の両面から価値

があるということです。


具体的には、社会的な問題を解決すること

を起業の営利活動とすることで、それを創

造することがCSVということです。


もっと端的に述べれば、社会問題の解決を

会社の事業にするということです。


これについては、2014年版中小企業白

で、いくつかの例が紹介されています。


ひとつは、キリンが、「飲酒運転による交

通事故の多発という社会問題に対して、世

界初のノンアルコールビールを開発」した

ことや、「物流における環境負担の軽減を

図るために、集荷する商品をできるだけ集

約するなどして、CO2排出削減とコスト

削減の両立を可能にしたこと」です。


もうひとつは、ネスレが「レミアム・コー

ヒー用の豆の仕入先であるアフリカや中南

米の貧困地域の零細農家に対して、農法に

関するアドバイスを提供したり、銀行融資

に対する保証をするなど栽培農家に対して

密に支援することにより、高品質のコー

ヒー豆を安定して仕入れることを実現する

とともに、高品質の豆には価格を上乗せし

て、しかも農家に直接支払うことで、栽培

農家のモチベーションを高め、生産性の向

上と農家の所得の増加をもたらした」こと

です。


これらはいずれもすばらしい取り組みです

が、私は、ポーターのCSVの概念は後付

けだと思っています。


ポーターが提唱するまでもなく、前述の2

つの会社を始め、このような発想ですでに

多くの会社が実践しています。


そして、私が今回CSV経営を取り上げた

理由は、現在の会社の事業は、社会的な課

題を解決することが大きな趨勢になってい

ると私は考えているからです。


単に、優れた製品を製造する、安い商品を

販売する、高度なサービスを提供するとい

うだけでは差別化が難しくなっており、社

会的な課題を解決することが、大きな需要

に応えることになってきています。


現在、事業展開をどの方向に向ければよい

か思案している経営者の方は、社会的な課

題を解決することをヒントに、新たな事業

展開を検討することをお薦めしたいと思い

ます。


そこには強いニーズがあると私は考えてい

ます。

 

 

 

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銀行は不況業種

佐世保市に本社がある親和銀行を傘下に持

つ、ふくおかフィナンシャルグループ(F

FG)と、長崎市に本社がある十八銀行

経営統合することが、8月に公正取引委員

会に認められました。


経営統合十八銀行持株会社であるFF

Gの子会社になること)は、来年の4月の

予定で、再来年は、十八銀行親和銀行

合併する予定のようです。


ちなみに、合併後の銀行の長崎県内での融

資シェアは70%を超える見込みで、公正

取引委員会は、両行の約1,000億円の

融資を他の銀行に譲渡して、融資シェアを

65%に下げることを条件に、排除措置命

令を行わないことを表明したため、平成

28年2月の統合計画発表から2年半を経

て、ようやく統合が実現する見込みになり

ました。


とはいえ、融資シェアの大きな銀行の誕生

を懸念する見方もあるようで、両行の合併

貸し渋りが起きるのではないかという報

道もあります。


(ご参考→ https://goo.gl/M9cLq5


しかし、私は、貸し渋りは起きないと思っ

ています。


なぜなら、貸し渋りは収益機会を逃すこと

になるからです。


両行は、合併しなければ生き残れないとい

う見通しのもとに合併に至ったわけで、合

併しても、余程の悪い条件でなければ、融

資を断るということは、考えにくいと思い

ます。


さらに、別の雑誌の報道にもある通り、銀

行は、現在、リスクに合わない低金利での

融資をしている可能性もあります。


(ご参考→ https://goo.gl/hDUQw8


今回の記事の結論のひとつは、銀行自身が

収益確保に苦しんでいるのに、収益機会を

逃そうとすることは考えにくく、仮に、融

資を断られた場合、それは貸し渋りではな

く、融資のリスクが高いからと言えるとい

うことです。


ふたつめは、仮に、現在の中小企業の経営

環境が厳しいとしても、それは、金融支援

だけで解決できない時代に入っているとい

うことです。


会社にとって安定的な資金調達は大切です

が、資金を調達できただけでは利益は得ら

れません。


事業そのものが利益を得られるものでなけ

れば、金融支援は無意味です。


銀行は採算ぎりぎりの低利で融資を伸ばそ

うとしている状況にあって、中小企業の経

営環境が変わらない状況であれば、「銀行

の姿勢が変わらないから、中小企業が苦し

い」という考え方はあてはまらない時代に

なっていると、私は考えています。

 

 

 

 

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