鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ほめちぎって業績を伸ばす

三重県伊勢市にある、南部自動車学校を運

営する大東自動車社長の加藤光一さんのご

著書、「『ほめちぎる教習所』のやる気の

育て方」( https://amzn.to/2n98hUn )を

拝読しました。


同校では、教官が教習生をほめちぎって運

転を教えることで、業績を伸ばしているそ

うです。


これは、ひとことで言えば、教習にコーチ

ングスキルを取り入れたということです。


したがって、コーチングをご存知の方であ

れば、この自動車学校の業績が伸びたこと

については、特に不思議なこととは感じな

いでしょう。


そこで、今回は、この本を読んで、私が印

象に残ったこと、2点についてご紹介した

いと思います。


ひとつは、「いまの若いやつは」です。


私はこの言葉は使わないのですが、部下が

自分の意図通りに働いてくれないときに、

この言葉を使いたくなる人もいるでしょ

う。


これは、私の個人的な分析ですが、「いま

の若いやつは」と言いたくなるとき、上司

は部下に対して察しがよくないとか、仕事

への意欲がないと感じるときでしょう。


一方、上司が批判したくなった部下は、上

司の指示が不明瞭であったり、意図が伝

わったとしても納得できないものであった

ために、不満を感じているのでしょう。


このような状態への対処法として、同書の

監修者の坪田信貴さんは、「若い人」に伝

わる伝え方をしましょうと述べておられま

す。


これは、上司から見れば若い人に合わせて

譲歩することに思えるかもしれませんが、

「自分の意図を汲む若い人」が現れること

を待つより、目の前にいる「察しが悪い若

い人」に納得できる方法で説明して、すぐ

に働いてもらう方が得策ということでしょ

う。


これも、広い意味での「ほめちぎる」のひ

とつだと思います。


ふたつめは、「地球のすべての人は非常識

で無知」と考えるいうことです。


これは、私自身もそうなのですが、多くの

人は、話し相手も自分の持っている知識と

同じ知識を持っているという前提で話をし

てしまいがちなので、もし、相手の持って

いる知識が少なかったときに、「どうして

自分の言っていることが分かってもらえな

いのか」と、落胆してしまうことがありま

す。


でも、冷静に考えれば、人は、育ってきた

環境や意見も趣味も違うので、自分の持っ

ている知識を相手が持っていなくても当た

り前です。


そこで、自分の知っていることを相手が知

らなかったり、自分の「常識」が相手の

「常識」でなかったときは、いらっとせず

に、「そういう考え方もあるのか」と考え

るようにするだけで、相手への接し方も効

果的なものに変えることができるというこ

とです。


今回の内容は、理解は容易なものだと思い

ますが、感情をコントロールする分野なの

で、実践はむずかしいと思います。


でも、南部自動車学校では、経営者、教官

が感情をコントロールすることで、業績を

伸ばしています。


感情をコントロールすることで業績を伸ば

すことができるのであれば、実践する大き

なモチベーションになるのではないかと思

います。

 

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180804184349j:plain

不満の真の原因

今回も、前回に引き続き、日本マクドナル

ドOBの経営コンサルタント、松下雅憲さ

んからお伺いしたお話について述べたいと

思います。


松下さんとお会いした時、その日の朝、た

またま私が目にしたニュースについて伺っ

て見ました。


(ご参考→ https://goo.gl/GZZjKB


その内容は、ある遊園地で着ぐるみを着て

働いている従業員が、過重な労働をさせら

れたことが原因で病気になり、会社に対し

て損害賠償請求をしたというものです。


ただし、ここからの内容は、その記事その

ものについてではなく、一般論としてお読

みいただきたいのですが、松下さんは、そ

のようなことの起きる本当の原因は、過重

な労働ではないと考えているということを

お話しくださいました。


そもそも、着ぐるみを着る仕事は重労働な

のであって、それが嫌なら、最初からその

ような仕事は選ばなかったはずだというこ

とです。


この松下さんのお考えは、松下さんの最新

刊である、「店長のための『スタッフが辞

めないお店』の作り方」

( https://amzn.to/2LO6SNZ )に書いてあ

ります。


それは、ある焼き鳥店のお話です。


その焼き鳥店では、グリストラップの清掃

は、店長かトップクラスのスタッフでない

とやらせてもらえない仕事になっているそ

うです。


グリストラップとは、「油水分離阻集器の

ことで、油脂を含む汚水が排水管設備を妨

げないよう設置を義務づけられた装置」だ

そうです。


(ご参考→ https://goo.gl/3nKNDg


グリストラップの清掃は、一般的には、重

労働で、かつ、“汚れ仕事”で、普通の人

なら嫌がる仕事です。


しかし、そのお店のあるスタッフは、グリ

ストラップの清掃の仕事をしたいと、店長

に何度も願い出て、ようやくその仕事を任

せてもらえるようになったそうです。


では、なぜ、そのスタッフがグリストラッ

プの清掃をしたいと申し出たかというと、

それは、その仕事が、顧客やスタッフに喜

んでもらうための重要な仕事ということを

理解しており、名誉なことであると考えて

いるからだそうです。


このようなお話はきれいごとのように思わ

れますが、その焼き鳥店では、スタッフが

そのように仕事を受け止めるようになるた

めの環境がしっかりと整えられているよう

です。


そして、このような考え方は、ドラッカー

の著書に出てくる、「3人の石工」のお話

などで、すでに、多くの方に知られていま

す。


(ご参考→ https://goo.gl/Y21eVT


今回の記事の結論は、仕事の不満は、表面

的には仕事そのものの不満ではあっても、

マネジメントの関与が薄いことが真の原因

になっているということです。

 

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180803144957j:plain

仕事の満足6ステージ

今回も、前回に引き続き、日本マクドナル

ドOBの経営コンサルタント、松下雅憲さ

んからお伺いしたお話について述べたいと

思います。


以前も少し触れたことがあるのですが、

従業員満足度の向上→顧客満足度の向

上」をどう実現するかという具体的な方法

は、あまり知られていません。


(ご参考→ https://goo.gl/2LqqHa


これについて、松下さんは、従業員の方に

「仕事の満足6ステージ」を昇って行って

もらうことで、売上が増える(顧客満足度

が向上する)と、お話しされておられまし

た。


6つのステージとは次のとおりです。


第1ステージ:快適な労働環境(職場の環

境がきちんと整備されている)


第2ステージ:報酬と承認(明確かつフェ

アな基準で報酬が得られ、承認を受ける)


第3ステージ:目標と評価(目標を与えら

れ、それを達成して評価され、働く意欲が

向上する)


第4ステージ:成長(自らの成長を実感

し、より高いレベルでの満足感を得る)


第5ステージ:貢献(同僚や地域に貢献し

ていることを自覚することで、プライドが

生まれる)


第6ステージ:感謝・誇り(自分を成長さ

せてくれた会社や同僚に感謝し、それに対

して誇りを持つ)


実は、この6つのステージは、松下さんの

ご著書、「『これからもあなたと働きた

い』と言われる店長がしているシンプルな

習慣」( https://amzn.to/2LMUwJU )の

主要テーマでもあり、詳細は同書をご覧い

ただきたいと思います。


ただ、今回の記事でお伝えしたいと思った

ことは、(1)単に従業員満足度を高める

だけでは顧客満足度を高めることはできな

い、(2)多くの店長が実施している従業

員満足度を高める施策は、ステージ2か3

のまでである、(3)ステージ4以上の従

業員満足度を高めるためのスキルを店長が

身に付ければ、自ずと店の業績も高まると

いうことです。


とはいえ、これは言うは易く行うは難しで

あることも確かです。


ただ、少なくとも、どうすれば業績が向上

するか分からない状態ではなく、業績を向

上させる方法が分かっており、後は、それ

を実践するスキルを身に付けることが課題

になっているということが分かっているだ

けでも、業績に悩んでいる飲食店にとって

は、大きな希望になるということを、松下

さんのお話をきいて感じました。


そして、業績を向上させる方法が分かって

いるにもかかわらず、それを実践せずに、

業績不振を従業員の責任、景気の責任にし

たままでは、業績を向上させることができ

ないばかりではなく、それを実践している

お店と大きな差がつけられることになって

しまいます。

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

f:id:rokkakuakio:20180803094552j:plain

退職時面接

先日、以前にもご紹介した、日本マクド

ルドOBで、「店長のための『スタッフが

辞めないお店』の作り方」

( https://amzn.to/2LO6SNZ )などの著者

でもある、経営コンサルタントの松下雅憲

さんとお会いしました。


そこで、松下さんから面白いお話をいくつ

かきいてきたのですが、今回は、その中か

ら、退職時面接についてご紹介したいと思

います。


それは、文字通り、退職する飲食店スタッ

フと、退職する日に店長が面接するという

ものです。


もちろん、退職するスタッフは、もう、そ

のお店と仕事上の関わりはなくなるので、

誰のための面接かというと、店長のための

面接ということになります。


この退職時面接で、具体的には何をするの

かというと、多くの方がご想像しておられ

る通り、在職時には言いにくかったけれど

も、退職する今だからお話しできるという

内容をきくということが主な目的です。


(その他にも、知人を新たなスタッフとし

て紹介してもらったり、退職後もかつての

職場を顧客として訪れてもらえるようにす

る目的もあります)


このような内容は、話を聴く側の店長とし

ては、ききにくいものでしょう。


でも、松下さんは、そういう情報こそあり

がたいものであり、退職の機会でなければ

きくことができないので、必ず退職時面接

をするようにと、顧問先の方にはお話しさ

れておられるようです。


(ただ、実際には、時間的余裕などの理由

で、退職時面接はなかなか浸透していない

そうです)


この、松下さんのお考えは、容易に理解で

きる内容だと思うので、それを行う理由に

ついての説明は不要だと思います。


ただ、退職時面接をする側の店長としては

気持ちが重たくなる仕事なので、なかなか

実施されていないようです。


でも、松下さんによれば、退職していく人

のお話をきくことは、精神的にきついけれ

ど、だからといってお店を改善しないまま

にしてしまえば、お店に不満を持つ人が減

らず、そして新たな人材を集めなければな

らなくなるので、その負担の方が何倍も大

きくなると考えているそうです。


確かに、耳の痛い情報ほどありがたいわけ

で、私が松下さんからこのお話をきいたと

きは、目からうろこが落ちがような感じが

しました。


そして、これは、松下さんからきいたわけ

ではないのですが、お店のスタッフは、退

職するときに面接する相手であると考える

と、その面接のときにあまり耳の痛い話を

きかなくてすむようにと、店長は、普段か

らいろいろな工夫をすることを意識できる

ようになるのではないかと思いました。


それにしても、飲食店の店長を務めること

は、本当にたいへんで、でも、やりがいの

あるお仕事でもあると感じました。

 

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180801210519j:plain

社外取締役

最近、社外取締役が注目を浴びています。


その最も大きな要因は、平成27年から、

上場会社に対して、コーポレートガバナン

ス・コード(上場企業が守るべき行動規範

を示した企業統治の指針)が適用され、そ

れによって、社外取締役を2人以上置くこ

とが規定されたからでしょう。


ただ、そもそもコーポレートガバナンス

コードが定められたことの背景のひとつに

は、上場会社の不祥事が多発していること

があり、そのような状況が社外取締役の活

用によって解消されることが期待されるよ

うになったのだと思います。


社外取締役は、会社法に定義されています

が、簡単に言えば、就任時点で、そこから

過去10年の間に、その会社の役員・従業

員でなかった取締役で、社内のしがらみに

とらわれずに、独立性の高い活動をするこ

となどが期待されています。(※)


ただ、私は、この社外取締役の制度は形骸

化すると考えています。


前述の通り、上場会社は、社外取締役を置

かなければならなくなりましたが、その一

方で、その責任の重さから、就任を受け入

れてくれる人がなかなか見つからない状況

にあります。


なぜ責任が重いかというと、社外取締役

あっても、社外取締役でない取締役と同様

に、株主から責任を問われる立場にあるか

らです。


そこで、社外取締役に就任してもらいやす

くするための制度として、社外取締役の責

任を軽減できるようにする責任限定契約制

度が設けられました。(※)


ちなみに、社外取締役の責任の限度額は、

契約額か報酬の2年分のいずれか多い額

までです。(※)


本題に戻って、私が、なぜ、社外取締役

制度が形骸化すると考えているのかとい

うと、この責任限定契約制度があるから

です。


同じ取締役であっても、取締役会で意見

が対立したときは、責任限定契約のない

取締役と責任限定契約のある取締役の間

では、おのずと発言権の大きさも変わり

ます。


そこで、もし、社外取締役が、責任限定

契約によって責任が軽減されている場合

は、その期待されている役割を果たせな

くなる可能性が高くなります。


もちろん、責任限定契約があるからと

いって、社外取締役がなんら効果がない

とまでは言えませんが、限界があるとい

うことは間違いないでしょう。


ただ、私は、「社外取締役制度は形骸化

するであろうから、無意味だ」と批判す

るつもりはありません。


そもそも、日本には、社外取締役制度は

なじまないと思います。


なぜなら、株式会社は表向きは株主に主

権がありますが、実態は、従業員と、そ

の従業員から昇格した役員や社長が、会

社の最大のイニシアティブを握っている

からです。


ですから、社外取締役が、内部昇格者の

役員と同等に取締役会で発言し、かつ、

責任も負うということは、そもそも困難

な状況にあります。


そのような状況であるにもかかわらず、

社外取締役を就任させても、表向きには

健全性な運営をしているようにアピール

はできても、「名ばかり社外取締役」に

なってしまう可能性が高いと私は考えて

います。


では、どうすればよいのかということに

ついては、文字数の兼ね合いで、別の機

会にお伝えしたいと思います。


もうひとつ、社外取締役に関しての誤解

についてお伝えしたいと思います。


それは、米国では社外取締役が多いが、

日本では少ないという批判です。


これは、前提条件を理解していないこと

によって起きる批判です。


米国の経営者は、一般の従業員の300

倍の年収を得ていると言われています。


一方で、日本では、上場会社の社長でも

一般の従業員の年収の10倍程度と言わ

れています。


なぜこのような差があるのかというと、

極端な表現をすれば、米国では、経営者

が自らの収入を増やそうとして、自らの

在任している期間だけ会社の利益を増や

そうとする行動をとっているからです。


そこで、経営者が極端に利己的なことを

しないよう牽制することを主な目的とし

て、株主が社外取締役を送り込んでいる

わけです。


そのため、社外取締役が日本より定着し

ています。


したがって、日本で期待されている社外

取締役の役割と、米国の社外取締役の役

割は異なるということに、注意が必要で

す。


(この記事で、※印のついた文章につい

ては、分かりやすさを優先し、正確性を

犠牲にしておりますので、あらかじめご

ご了承ください)

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180731232452j:plain

行動経済学

グロービス経営大学院で講師を務めておら

れる溜田信さんが、ポッドキャストで、行

動経済学についてお話しされておられまし

た。


(ご参考→ https://goo.gl/o29nkn


そのおおよその内容は、次の通りです。


すなわち、「あなたにこの千円札をあげま

すが、その千円札を隣にいる人と話し合っ

て分け合うことが条件です。


きちんと話し合いができたなら、この千円

札をあなたにあげますが、話し合いがつか

なければあげません」と言われたらどうす

るか、というものです。


そうすると、多くの人は、1,000円を

どう配分することがよいかと考えてしまう

ようです。


しかし、純粋に千円札をもらうにはどうす

ればよいかということだけを考えるのであ

れば、自分が1円、相手に999円で分け

ることも正解になります。


ただ、実際には、人は、純粋な解決策を採

ることは少なく、他の人との関わりを判断

の要因に入れてしまっているようです。


これと似た例として、私は、イギリスの高

級ブランド、バーバリーへの批判を思い起

こします。


(ご参考→ https://goo.gl/eLo3VR


ハフィントンポストによると、同社は、

2017年、衣料品やアクセサリー、香水

など2,860万ポンド分(約41.8億

円)の売れ残り商品を焼却処分し、過去5

年間では、9,000万ポンド(約130

億円)分の商品を廃棄していたそうです。


これに対して、「環境保護活動家などから

は、なぜチャリティー団体に寄付しないの

かなどと批判があがっている」そうです。


また、詳細は割愛しますが、日本の食品業

界の慣習となっている3分の1ルールが、

バーバリーと同様の構造で批判を浴びてい

ます。


(ご参考→ https://goo.gl/4HWhgF


私は、バーバリーや日本の食品業界の考え

方は、ビジネスの価値観では正しいと思っ

ています。


でも、ビジネスの対象である顧客や社会

は、ビジネスの価値観とは異なる価値観を

持っており、その価値観でビジネスを評価

します。


では、どうしたらよいのかということなの

ですが、私は明確な結論を出せないでいま

す。


ただ、現状としては、ビジネスの価値観に

軸足を置きつつ、顧客や社会の価値観にも

寄り添うという対応をしていく他はないの

ではないかと思っています。


今回の記事の結論は、経営者の方は、社会

にはいくつかの価値観があるという前提で

事業に臨むべきということです。

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180730121550j:plain

借りたお金を返すことはあたりまえ

「借りたお金を返すことはあたりまえ」と

いうことは、文字通りあたりまえです。


しかし、希に、「銀行から借りたお金は返

さなくてもよい」と考えている会社経営者

の方に会うことがあります。


もちろん、例外があります。


それは、銀行に悪意があったり、銀行とし

て尽くすべき注意義務を怠ったりしたこと

で、融資を受けた側が損害を受けた場合

で、そのような場合は、融資額の全部、ま

たは、一部を返済しなくてもよいでしょ

う。


確かに、そのような悪意のある銀行の被害

を受けた方もいます。


でも、そのような例は極一部であり、多く

の事業性融資は、融資を受けたいという申

し出に応じて銀行が融資をしているので、

きちんと返済する義務があります。


それでも、銀行に融資を返す必要はないと

主張する会社経営者は、「銀行には貸手責

任がある」と主張します。


貸手責任ということばには、明確な定義は

ありませんが、一般的には、貸手の判断で

行った融資が返済されなかったとき、その

損失は貸手が被らなければならないという

ことでしょう。


話がそれますが、日本で貸手責任というこ

とばが使われるときは、多くは、融資を行

う際に、銀行がきちんとした説明をする責

任を怠ったとか、銀行が悪意を持って事実

と異なることを説明したり、融資を受ける

側に不利となる事実を隠していたりした、

というようなときに使われます。


でも、本来は、銀行が融資審査を行うとき

に、その判断が誤ったことで被る損害を負

うこと、すなわち、信用リスクを負うこと

を指すものでしょう。


話を戻して、確かに、銀行には貸手責任が

ありますが、それは、あくまで会計的な観

点からの信用リスクに対する責任であり、

銀行に貸手責任があることをもって、融資

を受けている側、すなわち借手に、民法

の融資の返済義務がなくなるということで

はありません。


(この文章は、やや難解ですので、もし、

理解できない方は、銀行の責任があるとし

ても、それは融資の返済義務には影響しな

いものであるというように理解してくださ

い)


また、銀行から債務免除を受けた会社があ

るので、自社も債務免除を受けられるよう

にすべきだとお話しする方に会う時もあり

ます。


これは、詳細は割愛しますが、銀行が債務

免除をするときは、確かに銀行が貸手責任

を認めていますが、その前提として、株主

や経営者は銀行より厳しい責任を問われて

います。


すなわち、銀行から融資を免除してもらっ

た会社では、ほとんどは社長は退任し、さ

らに、社長個人のほとんどの私財を会社の

ために提供しています。


ここまで、貸手責任について説明してきま

したが、何を伝えたかったのかというと、

銀行に法令違反や悪意がない限り、銀行の

貸手責任は、融資を受けている側、すなわ

ち借手の責任よりは軽い、どんなに重くて

も借手責任と同等ということです。


世の中には、困っている会社の弱みにつけ

いろうとする人もいるので、銀行の責任だ

けを強調する“専門家”の誤った助言には

ご注意いただき、融資の責任について間

違った理解をしないよう気をつけていただ

きたいと思います。

 

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180729192156j:plain