鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

売れる値段とはマーケットが認める価値

[要旨]

稲盛和夫さんによれば、京セラでは、原価+利益=売値という、原価主義は採らないことにしているそうです。売値を原価+利益より高くした場合、暴利を得ることになるという批判がありますが、顧客が喜んで購入する価格、すなわち、市場が認める価値で販売する場合、その批判はあたらないと考えているそうです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、稲盛和夫さんのご著書、「京セラフィロソフィー」を拝読して、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、稲盛さんは、値決めをする時は、自社製品の市場価格を勘案しなければならないので、売価還元方式で原価を求めなければならないと述べておられますが、これは、単に、市場価格に合わせて売値を決めればよいというだけではなく、その売値で利益を得られるような原価を実現しなければならないということを説明しました。

これに続いて、稲盛さんは、製品の価値は原価を基準に決めるのではなく、価値を基準にして決めるべきであるということを説明しておられます。「私は、だいぶ昔から、『原価+利益=売値』という、原価主義は採らないと言い続けてきました。京セラの社員に対しても、私は、次のように話していました。京セラは、原価主義で販売価格を決めるようなことはしない。京セラは、販売する品物の価値で売る。例えば、京セラが納入する絶縁材料を使って、お客様が、ある真空管をつくり、それが1本200円で売れた。

お客様は、京セラの絶縁材料を20円で買っているけれそも、真空管は200円で売れるから、非常にもうかると喜んでおられる。たとえ、その絶縁材料の原価が5円だとしても、真空管を構成する部品として重要な絶縁材料であり、十分、利益も取れ、お客様が『20円なら喜んで買おう』と言ってくれるのであれば、『5円のものを20円で売るなんて、暴利じゃないのか』と言う人もあるかもしれないが、それでいいではないか。(中略)お客様がその価値を認めてお金を支払ってくれるということは、お客様がもそれによって利益を受けているわけですから、暴利でも何でもないのです。

逆に、こちらが、原価に200円かかったから、40円の利益を乗せて、240円で売ろうと思っても、お客様から、『240円では、到底、買えません。50円なら買ってもいい』と言われれば、その商品には50円の価値しかないわけです。50円の価値しかないものを、200円もかけてつくった訳ですから、それは技術屋の失敗です。『原価がいくらだから、売値はこうなります』といくら言ってみたって、そのような話しはあいてに通用しません。つまり、売れる値段とは、マーケットが認めてくれる製品の価値で決まってくるのです」(463ページ)

今回は、前回の逆で、原価+利益<市場価格であった場合は、原価+利益を売値とすべきではなく、市場価格を売値とすべきと稲盛さんは述べておられます。売値は市場価格を勘案して決めなければならない訳ですが、その市場価格は、必ずしも、原価+利益より低いとは限りません。したがって、原価+利益<市場価格のときに、売値=原価+利益としてしまえば、収益機会を逃すことになってしまうということは避けるべきでしょう。ところが、稲盛さんがこのような指摘をしておられるのは、売値>原価+利益とすることに抵抗を感じる人が多いからだと思います。

このような考え方は、マーケティングコンセプトが、生産志向、製品志向の時代は適していると言えます。しかし、現在は、顧客志向、マーケティング志向の時代なので、稲盛さんもご指摘しておられるように、「売れる値段とは、マーケットが認めてくれる製品の価値で決まってくる」と考えなければなりません。これを言い換えれば、売値は原価+利益から決めるということは、市場を見ていないということです。きちんと市場を見ていれば、原価+利益が市場価格と比較して安いのか、それとも、高いのかが分かり、不適切な値決めをすることを避けることができるようになるでしょう。

2023/11/14 No.2526