鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

どんなものも計数化して考えれば売れる

[要旨]

中小企業診断士の佐藤義典先生は、戦略を実践するにあたって、数値で管理することが重要と述べておられます。その理由は、効果を測定できること、日常業務とリンクしやすいこと、競合他社との比較ができること、事前に検証できることといったものがあります。


[本文]

中小企業診断士の佐藤義典先生のご著書、「図解実戦マーケティング戦略」を拝読しました。佐藤先生は、同書の序文で、マーケティング戦略を実践するにあたっては、数値の裏付けを得ることが重要であると述べておられます。「優秀な経営者は、直感を大事にする、とはよく言われます。しかし、それは直感が常に正しいことの証明にはなりません。今まで成功した経営者が、より直感を大事にし、失敗した経営者が、直感より数字を大事にした、というデータがあれば、それは言えますが、そのようなデータがあるのでしょうか?

また、分析を終えて、数字が答えを出してくれないときに、直感で決めるのはともかく、数字が答えを導き出せるときに、数字を使わないのは無謀です。『そうは言っても、戦略は数値化できるものではない』と、多くの人がそう思っているかもしれません。事実、戦略を『図』で表すツールは数あれど、『数字』で表すツールは意外と少ないものです。

確かに、すべての戦略が数値化できるわけではありません。しかし(中略)、戦略を数値化することのメリットは4つあります。(1)効果測定:数値化すれば、効果を検証できる(中略)(2)目標の定義と管理:数値化すれば、日常業務とリンクしやすい(中略)(3)ベンチマーキング:数値化すれば、競合他社との比較ができる(中略)(4)シミュレーション:数値化すれば、事前に検証できる(中略)

以上の4つの理由で、私は戦略を数値化することが、極めて重要だと考えています。(中略)YKKの創立者吉田忠雄氏も、『どんなものでも、まずは計数化する、そこから考えれば、きちんと売れるはずだ。売れなかったら、そこでズレた理由を探していくんだ』という趣旨のことを述べています。これが戦略を数値化することの意味なのです」(8ページ)

佐藤先生の述べておられることは、まったくその通りであると思いますし、ほとんどの方が同意すると思います。しかし、これも、これまで私が何度も述べてきていますが、事業活動を数値で管理している中小企業は少数派です。この理由については、ほぼ、明らかです。事業活動を数値で管理しない経営者は、自社の事業は必ず成功すると考えているからです。必ず成功すると考えているわけですから、自社の事業を管理する必要性も感じなくて当然です。しかし、多くの場合、その考えは誤っています。

「自社の事業がすばらしい」を考えることはよいことなのですが、それは、事業に携わる側からの考えです。顧客から見てそのような事業をすばらしいと感じることもあるかもしれませんが、会社に継続的な利益を与えるほど、製品を購入したい、または、利用したいと考える顧客はあまり多くないかもしれません。また、すばらしい製品やサービスは、自社だけでなく、同程度の水準か、または、それ以上のものを、ライバルの会社が提供しているかもしれないのです。

だからと言って、事業活動を数値で管理すれば、事業が必ず成功するというわけでもありません。ただ、数値で管理しない会社は、経営者が独善的になってしまいやすいと言えます。経営者が、より客観的に経営する会社の方が、よりよい成果を得ることに間違いはないでしょう。これも当然のことなのですが、未だに見落とされがちではないかということを、佐藤先生の本を読んで、改めて感じています。

2023/1/24 No.2232