鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ジンとカレーの相性はワインと肉以上

[要旨]

バカルディジャパンは、「ジントニックとカレーは、赤ワインと肉以上に相性がいい」というプレスリリースを発表した結果、SNSで反響があり、同社製品のボンベイサファイアの出荷数は、5年間で1.7倍になりました。このように、商品そもののを変えなくても、商品の認識の仕方、すなわち、パーセプションを変えることで、ヒット商品を生むことができます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、PRストラテジストの本田哲也さんのご著書、「ナラティブカンパニー-企業を変革する『物語』の力」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。本田さんは、ナラティブカンパニーには、パーセプションという考え方が重要ということをご説明しておられます。パーセプションとは、一般的には、理解、認識という意味ですが、ナラティブカンパニーを実践する観点では、何らかの価値観にもとづき、社会的な認識をつくることという考え方であり、その事例として、バカルディジャパンの例をご紹介しておられます。

「洋酒メーカーのバカルディジャパンは、『ジントニック』というカテゴリーのパーセプションを、カクテルの1種から、大衆的なアルコール飲料へと変化させることを狙った。戦略のキーワードは、『食べ合わせ』。AIを用いた科学的分析で、『ジントニックと相性の良い食べ物は何か?』という実証を行い、その結果、導入されたのが『カレー』だった。ジントニックとカレーは、『味』という部分で補完関係にあり、スパイスがシナジー効果をつくる。非常に相性の良い組み合わせだった。2019年10月、バカルディジャパンは『ジントニックとカレーは、赤ワインと肉以上に相性がいい』というプレスリリースを発表。

この意外な組み合わせは、SNS上でも、『試したことはないけど気になる』、『まさかの面白いことを全力で研究している』といった反響を呼んだ。同社は、その後もカレーフェスとのコラボやカレー業界への啓蒙を積極的に行い、『カレーにはジントニック』という、新たなパーセプションを獲得していった。ジントニックにフォーカスした施策によって、ボンベイサファイアの出荷数は、2015年から5年間で1.7倍の6万ケースまで成長。カレーとの組み合わせなど、新しい飲用シーンの提案によって、市場が徐々に拡大している」(103ページ)

私は、ボンベイサファイアと同様の事例として、日清フーズの小麦粉「クッキングフラワー」を思い出しました。小麦粉と言えば、従来は、クッキーやうどんの材料と言う位置づけでしたが、クッキングフラワーは、小麦粉を、胡椒や塩などと同じ調味料として販売しています。とはいえ、従来も、小麦粉は調味料的な使い方をされていましたが、クッキングフラワーは、小さな瓶に入れることで、調味料として使うものということを明確にして販売されています。

その結果、2015年の発売開始後、約2年間で800万個が売れたことからも、調味料としての需要が多かったということがわかるでしょう。これらの例のように、商品そのものは変えなくても、パーセプションを変えることによって、市場ではそれは新商品となり、さらに、ヒット商品にもなるわけです。したがって、商品開発は、パーセプションを変えるという方法でも行うことができると考えることができるということが言えるでしょう。

2023/1/11 No.2219