鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

努力しない会社は支援の対象外とすべき

[要旨]

コロナ禍にあって業績が悪化している会社が増えていますが、中には、業績を回復させるために懸命の努力を続けている会社があります。そのような会社は、政府の支援策の対象とするべきです。一方、経営者が公私混同をしたり、会計記録を不適切に行ったりする会社など、事業改善のための努力を怠っている会社は、政府の支援策の対象から外すべきでしょう。


[本文]

先日、共同通信編集委員橋本卓典さんが、ゾンビ会社に関する記事を、ダイヤモンドオンラインに寄稿しておられました。橋本さんは、記事の中で、広島銀行OBで、経営コンサルタントの上野英雄さんがご支援しておられる会社についてご紹介しておられます。「もともとは、居酒屋2店舗とテイクアウトの飲食店1店舗の、計3店舗を展開。居酒屋は午前3~4時まで営業して繁盛していたものの、コロナの感染拡大後に午後10時以降の客足が途絶え、業績が悪化した。

そこでゼロゼロ融資で資金を調達し、複数店のメニューを集中的に調理する、セントラルキッチン事業に打って出るため、用地を取得した。ところが、ロシアのウクライナ侵攻後、エネルギー価格の高騰などによって業績がさらに落ち込み、手元資金が逼迫。1店舗の居酒屋と、テイクアウト店舗の撤退に加え、セントラルキッチン事業のために取得した用地の売却まで決断することになってしまった。しかも、居酒屋の撤退でも追加支出を迫られることになる。

居抜きで居酒屋店舗を借りてくれる飲食店が現れず、店舗の原状回復費用として、800万円が必要になったのだ。結局、この想定外の費用によって、従業員の福利厚生のための保養所用に取得していた土地も手放すことになった。この企業の経営者は夏場に体調を崩し、人工透析の治療のために数カ月間、入院もしている。それでも、『自分が店に出て行けば、必ず挽回できる』と再建をあきらめていないという。(中略)こうした問題に直面している中小企業は、はたして全てゾンビ企業として数えるべきなのだろうか。

結論から言えば、問題に直面している企業でも、経営の合理化や、『キャッシュフロー経営』への転換など、業績を向上させようと動いているなら、決してゾンビ企業とはいえない。一部の中小企業には、もうかる仕事につながらないにもかかわらず、取引先に対して湯水のように交際費を使うという、バブル時代からの名残がある。ずさんな経費管理を行っている中小企業もしばしばある。領収書を紛失した経費や、知人に適切な理由もなしに貸した資金を、『社長貸付金』として帳簿に計上するケースが代表的だ。(中略)こうした企業こそが、ゾンビ企業だ」

私も、橋本さんと、ほぼ、同じ考えです。ただし、橋本さんの指すゾンビ企業と、一般的に言われているゾンビ企業では、定義が異なるようです。国際決済銀行(BIS)は、ゾンビ企業について、「設立10年以上で、3年以上にわたりインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満の企業」と定義しています。

ICR(=(営業利益+受取利息+受取配当金)÷(支払利息+割引料))が1未満であるということは、その会社は、事業の継続が危うい状態にあるということを示しているので、BISの定義は、単に、財務指標から見て事業が長続きしそうにない会社という意味です。一方、橋本さんは、本来なら市場から退場するべき会社を指して、ゾンビ企業と述べておられるのでしょう。言葉の定義はいずれにしても、橋本さんのご指摘は正しいと、私も考えています。

もうひとつ、橋本さんのご指摘で注意が必要だと思うことは、事業改善に努力している会社であっても、何らかのことがきっかけで、倒産してしまう会社はあるということです。「ゾンビ会社」の生命維持装置のスイッチは、銀行だけが握っているわけではないということも注意が必要だと思います。私は、ポストコロナの時代は、公私混同をしている会社や、必要場経営管理を怠っている会社は、当然、市場から退場するべき会社であり、政府からの支援の対象外とすべきだと思います。

2022/11/25 No.2172