[要旨]
ゼロゼロ融資などの支援策が、ゾンビ会社を延命する原因になっているという批判がありますが、ゾンビ会社かどうかという判断は、事後的でなければ分からないこともあり、結果として、ゾンビ会社の可能性のある会社にも支援をすることは避けることができない面があります。ただし、ゾンビ会社は倒産のリスクが高いため、仮に政府の支援策を受けても、早晩、淘汰される会社であることには変わりがないと考えることができます。
[本文]
12月9日に、経済評論家の塚崎公義さんが、ゼロゼロ融資に関する記事をダイヤモンドオンラインに寄稿しておられました。塚崎さんは、ゼロゼロ融資はゾンビ会社を延命させているという批判に、次のように反論しておられます。「(ゼロゼロ融資を利用した会社の中には)新型コロナ前から経営再建の見込みが薄かった『ゾンビ企業』も多く含まれていたと考えられているが、そうした企業の倒産が返済開始によって増加することが見込まれる。
そうなると、『ゾンビ企業を延命するために国民の血税を使った』という批判が出ることが予想されるが、筆者はそうは思わない。ゾンビ企業も経済の最悪期に雇用機会を提供する貴重な存在だったと前向きに理解している。景気後退時に雇用対策として公共投資を行い、無駄な道路が出来てしまう場合も多いが、それと比べればゾンビ企業の延命の方がはるかにマシである。重要なのは、境界線の企業が延命できることであろう。新型コロナ収束後まで延命すれば生き延びるのか、結局ダメなのかを見極めることは容易ではない。企業の将来性ということもあるが、新型コロナの持続期間の予想によっても大きく影響されるからである」
塚崎さんがご指摘しておられるように、ゼロゼロ融資は、ゾンビ会社を延命させている側面はあるものの、「新型コロナ収束後まで延命すれば生き延びるのか、結局ダメなのかを見極めることは容易ではない」ことから、「境界線の企業」を延命させることの方が得策であったと、私も考えています。ゾンビ会社とは、国際決済銀行によって、「3年以上に渡って、インタレスト・カバレッジ・レシオが1倍未満、かつ、設立10年以上の会社」と定義されていますが、塚崎さんの指すゾンビ会社は、非効率な経営をしていて、本来なら淘汰されるべきところを、政府の支援によって生き延びている会社ということだと思いますし、一般的にもそのような会社を指していると思います。
ただ、業績が悪い会社は客観的に分かるのですが、淘汰されるべき会社かどうかというのは、見分けが難しい、というよりも、事後的でなければ分からないという面もあります。したがって、ゼロゼロ融資などの政府の支援策は、「境界線の企業」も延命することは避けることができないのが実態だと思います。逆に、ゾンビ会社の疑いがある会社を延命させてはならないということになれば、ゼロゼロ融資を受けることができる会社は、大幅に減少してしまい、緊急的な支援策の役割を果たせなくなってしまいます。
では、どうすればよいのかというと、塚崎さんは、「ゼロゼロ融資が返済期限を迎えれば、返済できないゾンビ企業は倒産することになろうから、その意味でも、ゾンビ企業が永遠に存続し続けることはないだろう」と指摘しておられます。私も、概ね、塚崎さんの指摘と同じ考えを持っています。ゾンビ会社は、半永久的に生き続けるように考えている方もいると思いますが、実際には、日々、薄氷を踏むような感じで事業を続けています。そのような会社は、健全な会社と比較して、ちょっとしたことがきっかけで倒産しやすい状態にあります。ですから、直ちに淘汰されるわけではないのですが、ある程度の期間が経てば、淘汰されることになると思います。
確かに、政府の支援策によって延命している間は、その支援策のコストは無駄なものになりますが、本当のゾンビ会社なのか、業績が回復するポテンシャルがある会社なのかを見分けることがが難しい以上、そのコストも支出をさけることができないものと言えるでしょう。その一方で、新たなゾンビ会社も出て来るので、ゾンビ会社がなくなるということもないのも事実なのですが、それは、政府の支援策によってゾンビ会社が生き延びているというよりは、ゾンビ会社を見分けることが難しいことによるコストと考えるべきだと、私は考えています。
2022/12/14 No.2191