鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

意思決定は用心深さよりスピードが大切

[要旨]

事業を行うにあたり、経営者は、状況が不確実な中でも意思決定を行わなければなりません。ただし、意思決定は、必ずしも正しいものとはならないので、確実に行おうとして時間をかけるよりも、迅速に行うことが大切です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、山田修さんらのご著書、「プロフェッショナルリーダーの教科書」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。同書の執筆陣の1人である、経営コンサルタントの福田秀人さんは、不確実性の高い経営環境にあって、どのような意思決定が望ましいかをご説明しておられます。

「先行き不透明な、不確実性がいっぱいのビジネスの世界で、会社をつぶさないために、トップやミドルはどのように決定し、行動すればよいのでしょうか。プロシアの将軍、クラウゼヴィッツは、彼の主著、『戦争論』で、『戦場は、何が起こっても不思議ではない不確実性の霧に覆われている』と論じましたが、ビジネスの世界も同じです。そして、彼の考えを信奉してきあアメリカ陸軍が開発し、戦争での教訓や技術の進歩を踏まえて改訂を重ねてきたのが、『アメリカ陸軍の指揮官マニュアル』です。(中略)

アメリカ陸軍の指揮官マニュアルは、決定と行動のスピード・アップ、状況の掌握、部下との信頼関係の向上などのために心がけるべき事項と方法を示すものです。(中略)(1)完全な解決にこだわって、決定を遅らせるな。(2)不確実性の軽減にこだわらず、不確実性を受け入れ、直感的意思決定をせよ。(3)報告が重要な事項を欠くことや誤っている場合もあるが、この問題には、できるだけ多くの情報源にあたって対応せよ。(4)用心深さによる誤りより、スピード、大胆さ、勢いによる誤りの方がましである。(5)時間を犠牲にして、敵についての知識を深めても、リスクが低減するとは限らない」(131ページ)

現在は、VUCAの時代と言われていますが、私は、それは、21世紀がそうなのではなく、すでに、クラウゼヴィッツの時代からそうであったと考えています。それはともかく、大切なことは、「用心深さによる誤りより、スピード、大胆さ、勢いによる誤りの方がまし」ということだと思います。意思決定は、間違えないことに越したことはありませんが、間違いを避けることもできません。そうであれば、迅速さが求められるわけです。ところが、経営者の方は、誤りを避けたいと考える方も少なくなく、そこで意思決定が遅れることもあるようです。

これについては、どう、対処すればよいかということですが、ひとつは、精緻な情報を集めることでしょう。私が何度も述べていますが、月次試算表などで、足元の自社の収支状況を確認できるようにしておくことは、誤った意思決定を避けるための基本的なことでしょう。もうひとつは、鍛錬を重ねることだと思います。不確実な状況での意思決定には、ある程度の英断が必要ですが、これを迅速に行うことができるようになるには、経験を積む方法以外にはないでしょう。

2022/7/8 No.2032