鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

成功者にならなければ成功はありえない

[要旨]

成功するためのノウハウである程度は事業を成功に近づけることはできますが、それは、他社からの「ノウハウ」に頼ったものであり、経営者が自らの実力で事業を成功させたとは言えません。本当の成功は、経営者が経営者としての能力を高めた結果、得られた成功でなければならなりません。


[本文]

今回も、前回に引き続き、犬飼ターボさんの小説、「CHANCE」から、同書を読んで、私が気づいた点についてご紹介したいと思います。主人公で青年起業家の泉卓也は、メンターの弓池から助言をもらいながら事業を順調に拡大していきますが、それが軌道に乗り始めたころで弓池は病死してしまいます。そして、弓池の葬儀などが済んでから、泉は、弓池からの教えを回想します。

「改めて考えれば、弓池ほどのビジネスの経験者でセンスを持った人間なら、卓也の失敗を、全部ではないにしろ、ほとんど予見できていたに違いない。何をすればいいか、何をしてはいけないかを、すべて前もって指示し、必要な手を打ち、成功の確率を限りなく高めることもできたであろうが、弓池はそうしなかった。(そして、卓也は、弓池が)最初に教えてくれた2つのことを思い出した。

(1つは)ゴールは人生の成功者になるということと、そして、(もう1つは)すべての選択肢の中から成功者にふさわしいと思うものを自由に選び、その結果を経験することが大切だと(いうことだ)もしも、その結果が間違ったものだと気がついたら、その選択を意識的に変えていくという、ゴールにたどり着く方法を、弓池は教えてくれたのだった。(中略)成功者にならなければ、成功はありえない、成功するということは成功者であるということなのだ」

私は、作者の犬飼さんが、この部分で読者に伝えようとしていたことは、事業を成功させるということは、経営者が、外部の専門家などから、成功のノウハウを教わり、それに従って事業を遂行することではありません。外部の専門家から助言を得ることはしたとしても、自分自身で試行錯誤を繰り返し、経営者としての能力を高めながら、その結果として事業を成功させるということだということです。

当然のことですが、経営者が他人の指示にしたがうだけであれば、操り人形でしかないわけで、自ら事業をマネジメントして成功させる能力を持つことができなければ、経営者として成功したとはいえません。これは、よく言われている、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」ということだと思うのですが、経営者の方の中には、早く「成功」したいと考え、「ノウハウ」や「裏技」などだけを求めてしまっている人は、少なくないと思います。

2022/6/14 No.2008