[要旨]
人は、安易に、バイブルなどに正解を得ようという気持ちを持っていますが、特に、経営者は、正解を外部に求めず、自ら考えて決断することが基本です。そして、経営コンサルタントは、経営者の意思決定の支援を行うことが、主な役割と言えます。
[本文]
経営コンサルタントで投資家の、瀧本哲史さんの著書(厳密には。2012年に開かれた瀧本さんの講演を文字にしたもの)、「2020年6月30日にまたここで会おう」を読みました。同書で最も印象に残ったことは、「バイブルを否定しよう」というものです。瀧本さんによれば、人はどうしても「分かりやすい答え」を求めてしまうそうです。そこで、バイブルなどには、「苦しいときは、どのように生きればよいか」という正解が戒律として書いてあるので、それに頼ろうとしてしまうそうです。
これをビジネスパーソンにあてはめれば、カリスマ経営者などの本を読んだり、講演を聴いたりして、それらをバイブルのようにして、そこに正解を求めがちだということです。でも、瀧本さんは、自分のことは自分で考えて決めなければならないと、お話しています。その理由について、瀧本さんはあまり述べておられませんが、自立的な人の方が望ましいということは、理解に難くないと思います。
この瀧本さんのご指摘に対し、「自分がどうすればよいかは、自分で考えなければならないのであれば、経営コンサルタントは何のためにいるのだ」という疑問を持つ方もいると思います。でも、これについても、よく聞くフレーズと思いますが、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」という考え方があります。
瀧本さんの考えも、これに通じるものがあると思います。事業をどう運営するかを、他人に答えを求める経営者よりも、自分で考えることができる経営者の方が、競争力があるということは、直感的に理解できると思います。私も、経営コンサルタントですが、そのコンサルティングの内容は、正解を教えるというよりも、顧問先の会社が、自力で課題を解決できる体制をつくることを中心にご支援をしています。