[要旨]
大きな会社では、上下関係が明確なので、肩書で部下を動かすことができますが、小さな組織では、その論理は通用しません。そこで、独立して起業する人は、優秀でわがままな人や、あまり優秀でない普通の人を上手に活用するマネジメントスキルが必要です。
[本文]
今回も、経営コンサルタントの瀧本哲史さんのご著書、「僕は君たちに武器を配りたい」から、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。同書に、瀧本さんは、大手コンサルタント会社などでマネージャー経験を持つ人が、独立したあとに失敗した事例について書いていました。というのは、独立したあとに、目をつけていたかつての部下を引き抜いたものの、その部下は、独立前のように、従順に動いてくれなくなったというものです。
なぜなら、大きな組織の中では、上下関係が明確になっているので、部下は上司の指示に従うものの、その組織を外れると、その関係は通用しなくなるわけです。そこで、自社で、直接、従業員を雇い入れて育成しようとすると、あまりにもレベルが低くて、手を焼く結果となるそうです。
これについて、瀧本さんは、リーダーには優秀だがわがままな人をマネージする能力も大切だが、それより、優秀でない人をマネージするスキルも大切だと指摘しています。そして、瀧本さんは、そのような能力を発揮している会社として、大手の運送会社を例に挙げています。その会社は、訳ありの人材が入社してくるものの、上手にマネジメントすることで、勤勉でさわやかな従業員に育成し、収益をあげているそうです。すなわち、その会社の収益の源泉は、荷物の運送よりも、人材マネジメント能力と言えるということです。
私も、これまでご支援してきた中小企業を見ていると、決して優秀とは言えない人ばかりが入社してくるものの、その人たちの優れた部分をじょうずに活かしている会社は業績もよいと感じています。むしろ、そのような会社の経営者の方からは、私もマネジメントのお手本にさせてもらっています。
ただ、前述の例のように、人材のマネジメントスキルが十分でないにもかかわらず、独立して失敗してしまうという人の例も、少なくないようです。これは当然のことですが、事業活動は組織的な活動なので、小さな会社であっても、経営者になろうとする人は、マネジメントスキルも身に付ける必要があるということを、瀧本さんの本を読んで、改めて感じました。
2021/10/14 No.1765