鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

回収してこその投資

[要旨]

中小企業で新たな投資を行うことは珍しくありませんが、その投資の回収が見込めるかどうかを前もってきちんと計算したり、投資後の利益の正確な計算を行っている会社はあまり多くありません。投資については、積極的に行うべきであるものの、回収することに、もっと意識を向け、より精緻な計算を行うことが必要です。


[本文]

公認会計士山田真哉さんのご著書、「問題です。2000円の弁当を3秒で『安い!』と思わせなさい」を拝読しました。その中で、「回収してこその投資」という言葉が印象に残りました。これは、個人資産に関する山田先生の助言です。世の中には、ちょっともうかりそうな投資話があふれていますが、冷静に考えてみれば、実は、あまり差がないと、私は考えています。仮に、5%の利回りが見込める投資商品があったとしても、その利回りを出すからには、それなりのリスクがあることは、間違いありません。そうでなければ、5%の利回りを謳わないでしょう。

分かりやすく言えば、5%の利回りが見込めるということは、同じような投資を20回行うと、1回(=20回×5%)は、投資金が返ってこなくなるという意味です。(実際には、そうなるとは限りませんが、意味としては、そういうことになるということです)そう考えると、5%の利回りが見込めるというのは、何か特別に得をするということではなく、それなりのリスクを負ってくれれるインセンティブとして高い利回りを出しますよと言っているだけで、投資をする側が得をしているわけではありません。ちなみに、誤解がないようにお伝えしておくと、私は、投資することを否定をするつもりはありません。

私がお伝えしたいことは、高い利回りの投資には、それに応じたリスクがあるので、利回りの高さだけを見て得をすると考えることは、あまり、適切ではないということです。話を山田先生のご著書に戻すと、「回収してこその投資」という意味は、私は、投資は、利益を実現できなければ、意味がないということだと解釈しました。このように書くと、「投資は利益を得るために行うことは当たり前だし、そのようなことをしない人はいないのではないか?」と考える方が多いと思います。

しかし、意外と、利益を意識していない投資をしている方は多いと、私は感じています。例えば、会社で新しい事業を始める、すなわち、設備投資、人材投資を行っておきながら、その投資利回りを計算している中小企業は、私は極わずかだと思っています。もちろん、新たな事業を始めた経営者としては、それが成功したかどうかに関心があるとは思いますが、きちんと、事業単体で損益計算をしている例は少なく、その事業の売上高や、会社全体の損益だけで判断している場合が圧倒的に多いようです。

そのようなことになってしまう理由については、詳細な説明は割愛しますが、ひとつは、新たな事業を始めることそのものが目的化していたり、もうひとつは、部門別会計を行っていないために、投資利回りの計算が難しい状態であるということが、最大の要因だと思います。私は、会社が成長するには、積極的に新たな事業を行うべきと思いますが、その前提として、きちんと投資が回収できるかどうか、根拠があやふやな状態で投資をすることは避けるべきだと思います。そうでなければ、投資の回収が危うくなってしまいます。

f:id:rokkakuakio:20210509152126j:plain