鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

事業再構築補助金と事業計画書

[要旨]

事業再構築補助金の申請にあたって、事業計画書を作成しなければなりませんが、それは、補助金のためだけに作成するものではありません。補助金の要件である、付加価値率を向上させるためには、自らが主体的になって事業計画書を作成しなければ、採択後にその遂行が難しくなるでしょう。


[本文]

事業再構築補助金のご相談を受けているときに、融資のご相談を受けているときと同じようなことを感じることがあります。それは、「事業計画書を作成して欲しい」という依頼を受けたときです。専門家に事業計画書の作成を依頼することは、あまりおかしなことではなさそうに思われますが、私がそれに疑問を感じる理由は、事業再構築補助金の審査や、融資の審査を通すための事業計画書を、経営者に代わって作成して欲しいという依頼をされるからです。

でも、事業再構築補助金の場合、提出する「事業計画書」は、その内容を、補助金を支給する側の政府にコミットするという意味合いがあります。具体的には、「補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、または、従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成」という目標を課せられます。

融資の場合も、銀行に提出する事業計画書は、単に、将来の業績見通しではなく、経営者の方がそれを達成させるという前提で融資が承認されるものです。したがって、事業計画書は、単に、審査を通すためだけの書類ではなく、経営者のコミットメントという位置づけで考えれば、(作成するにあたっての支援を依頼するのではなく)「専門家に作成してもらう」と依頼することは、あまり好ましくないと、私は感じます。

例え方が適切ではないですが、事業計画書の作成を専門家に依頼することは、好意を持っている異性に対し、交際してもらおうとしてラブレターを出そうとするとき、文章の上手な人にそれを書いてもらおうとすることと同じなのではないかと、私は考えています。文章の得意な人に代筆してもらったラブレターは、とてもよい文章が書かれているかもしれませんが、本人の気持ちが込められていなければ、無意味ですし、相手からも信頼を得ることができません。

ちなみに、これは、かつて補助金採択の審査をしていたことがあるという方からきいたのですが、いわゆる、「補助金専門家」に作らせたであろう申請書は、審査する側には、それが分かってしまうということです。ここで、「自分は事業計画書の作成が不得手なので、もし、自分で作成したものを提出して審査が通らなければ、目的は達せられない」とお考えの方もいると思います。しかし、会社にとって真の課題は、補助金が採択されたり、融資の承認を得たりすることではなく、事業を継続的に発展させることです。

補助金の活用も、融資を受けることも、その手段であって、目的ではありません。そして、事業を発展させていくには、事業計画書の作成は欠かせませんし、さらに、それよりも難しい課題にも、たくさん取り組まなければならないと思います。長期的視点からは、事業計画書の作成そのものは、会社の取り組むべき課題としては、それほど大きくないものではないのではないでしょうか。

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