鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

「だから何?」をなくす

[要旨]

人は、自分の伝えたいことを話したり書いたりしていても、それを聞いたり読んだりする側は、話し手や書き手の真の意図を汲み取れないことが、しばしば起こります。そこで、経営者の方は、ご自身の考える経営理念、目標、方針などを、文章にして読み直してみることが必要と思います。


[本文]

実は、この記事は、2日にわたって書いています。とはいっても、一度書いた記事を、その次の日に読み直して、必要であれば修正してから、配信しています。なぜこのようなことをしているのかというと、読者の方が記事を読んで、「だから何?」と感じることがないかを、自ら確認するためです。

理由は分からないのですが、人は、書く内容も、話す内容も、相手に伝えたいことを書いたり話したりしているつもりでも、実は、読んだり聴いたりしている側は、「だから何?」と思ってしまうことが少なくありません。そこで、前述のように、自分の書いた文章の読み直しをしています。

そして、このような、「だから何?」と感じるコミュニケーションは、ビジネスの場でも、しばしば、起きていると思います。私が、かつて、銀行に勤務していたとき、「工事受注明細は担保なんだ」と、何度も口にする上司がいました。私は、実は、この上司の言っていることの本当の意味が、ずっと分からず仕舞いになってしまいました。

「工事受注明細」(銀行によっては、書類の名称が変わることもあります)とは、建設会社の方であれば心当たりがあると思いますが、銀行に融資を申し込むとき、その時点で、受注している工事と、その進行度合い、工事代金の入金状況を一覧表にしたものです。銀行は、建設会社から融資の申し込みがあると、必ず、この「工事受注明細」を提出してもらっています。

建設会社は、ある程度のまとまった金額の工事を個別に受注するので、単に、売上高の推移だけでは業況の判断が難しいため、このような資料の提出を求めます。でも、これは、あくまで調査資料であり、しかも、ほとんどの場合、会社からの自己申告によるものです。それを、「担保なんだ」と口にする上司は、本当は何が言いたいのか、私は、理解できませんでした。

私の想像では、建設会社への融資の回収原資は工事代金なので、それを銀行が把握することで、確実に、融資を回収できるようになるということを伝えたかったのではないかと思います。ただ、その上司とは、あまりじっくり話す機会もなかったことから、最終的にその上司の本意を聞くことはできませんでした。

でも、もし、その意味について聞いてみたら、「昔、建設会社に融資をしたとき、その建設会社が倒産しそうになったが、あらかじめ提出してもらっていた工事受注明細を基に、売掛金を差し押さえするこができたので、無事に融資を回収することができた」というような話をきくことができたかもしれません。そういう背景が分かれば、私も、工事受注明細を、より、大切に見るようになったかもしれません。

そこで、経営者の方で、もし、自分の意図がなかなか従業員に伝わらないと感じている方がいたら、従業員の方は、経営者の方のお話を、「だから何?」と感じているのかもしれません。そういう状態を減らすためには、経営者の方の目指す方針や理念、目標などは、一度文章にして、読み直してみることをお薦めします。

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