鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

商品評価損と陳腐化

[要旨]

在庫品の経済的な価値が下落することを陳腐化といい、その価格の下落を商品評価損といいますが、自社商品の価格を維持するために、意図的な陳腐化である、計画的陳腐化が行われることもあります。


[本文]

前回は、品質の劣化などが原因で価値が減少することである、棚卸減耗について説明しましたが、今回は、商品評価損について説明します。在庫品は、仕入れた日から時間が経過すると、物理的な品質などが劣化しますが、在庫品によっては、物理的な品質が劣化しなくても、経済的な価値が下がることがあります。

例えば、流行品の衣類は、仕入れてから数か月経っても、物理的には品質は劣化しませんが、流行や季節が変わることで、経済的な価値が減少し、仕入れた直後の価格では販売できなくなります。このような、経済的な価値が下落することを陳腐化といい、その価格の下落を商品評価損といいます。

繰り返しになりますが、棚卸減耗は、在庫品の物理的な価値の減少ですが、商品評価損は経済的な価値の減少です。そして、商品評価損も、棚卸減耗と同じように、発生することそのものを防ごうとすると、収益機会を減らすことにつながるので、発生させないことよりも、可能な限り少なくしようとすることに注力することが大切です。また、その手法についても、精緻な需要予測をしたり、在庫品の管理を適宜行うという、棚卸減耗を防ぐ手法と同じです。

ただし、在庫品の陳腐化については、意図的な陳腐化である、計画的陳腐化が、しばしば行われます。計画的陳腐化の代表例は、自動車のモデルチェンジです。具体的には、計画的に新しいモデルの自動車を開発することで、既存のモデルの自動車の経済的価値を引き下げ、その利用者に対して、新しいモデルの自動車を買いたいという意欲を高めることができます。

いまは、自動車メーカーは、4~6年でフルモデルチェンジを行い、約1年ごとにマイナーモデルチェンジを行っていますが、こうすることで、自動車メーカーの販売する自動車は、価格を、常に、ほぼ一定にすることが期待できます。また、この計画的陳腐化は、自動車だけでなく、家電製品、携帯電話の移動機などでも行われています。ただし、頻繁なモデルチェンジは、資源の浪費になると批判される面もあり、計画的陳腐化を実施する場合は、幅広い視点から検討する必要があります。

 

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