鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

成功者になれない原因は食わず嫌い

[要旨]

多くのビジネスパーソンは、成功ノウハウの書かれた本を買うといった、改善しようとするふりをすることで満足してしまいますが、本当に事業を改善したい場合は、食わず嫌いをせずに貪欲に改善ノウハウを実践する必要があります。


[本文]

先日、水野敬也さんの小説、「夢をかなえるゾウ」を、オーディオブックで聴きました。ストーリーは、成功者になろうと思いつつも、なかなか行動を変えられないでいる、ダメダメなサラリーマンの主人公の前に、突然、ゾウの姿をした神さまのガネーシャが現れ、主人公に、人生を変えるための、たくさんのアドバイスをしていくというものです。アドバイスの中には、「靴を磨く」とか、「コンビニで募金する」とか地味なものばかりですが、それらにはどういう意味があるのかということを、ガネーシャは説得力のある説明をしてくれます。

ただ、終わりのころになって、「やはり、君は、人生を変えることができそうにないと思う」と、主人公に告げます。主人公は、「今まで、与えられた課題に、前向きに取り組んできたし、少しずつ、自分は変わっているのに、なぜか?」と聞き返します。これに対して、ガネーシャは、「実は、今まで伝えてきたアドバイスは、全部、君の本棚の中にある自己啓発書に書かれていることばかりで、結局、君は、これまで、本を買うだけで、変わったつもりになり、それだけで満足してしまうので、これからもそうなりかねない」と、理由を伝えます。

これについては、自分にもあてはまると感じただけでなく、コンサルタントとして、これまで多くの経営者の方に対して助言をしてきて、ガネーシャが主人公に伝えたようなことを言いたくなる気分になったことが、しばしば、あります。このことは、人は、本を買う、セミナーを聴く、教材を買う、コンサルタントやコーチに顧問になってもらうということだけで満足してしまい、実際に、改善するための具体的な行動をしていることは、ほとんどない、ということを水野さんが伝えようとしているのだと思います。

もう少し言及すると、人は、実際に行動を変えようとすると、もともと能力がないかもしれないのに、実際に行動を変えて失敗してしまうと、本当は自分には能力がないことが明らかになってしまかもしれないという恐れがあり、心の深いところにある潜在意識の部分では、行動を変えることを拒もうとするので、成功ノウハウの本を買うなどの表面的な行動をして変わろうとするふりをするだけで、自分をとりつくろうとしているのだと思います。

さらに言及すると、ガネーシャは、主人公に、ある会社の就職の面接に行く前に、神社にお参りするように助言します。これに対して、主人公は、「お参りしてもあまり意味がない」と反論しますが、これに対してガネーシャは、「成功者は、やれることはなんでもやろうとする」と、諭します。すなわち、自分を変えようとしているにもかかわらず、成功ノウハウについて、食わず嫌いをしていることも、改善のための行動を実践する妨げになっているようです。

ところで、私は、ときどき、経営者の方から、「いま、業績が伸び悩んでいる中小企業が、事業を改善するにはどうすればよいですか」ときかれることがあります。これに対して、私は、「いままで、業績が伸び悩んでいる中小企業が、事業を改善するための手法をやり尽くしてしまい、他に何かできることはないかと、悩んでいるところを見たことはありません。業績の悪い会社のほとんどは、やれることがあっても、それをやらないために、業績が低迷しています。

例えば、業績の悪い会社の90%は、月次試算表を翌月の10日までに作成し、1か月間の業績の確認をすることをしていません」と答えています。繰り返しになりますが、そして、これは、私自身にもあてはまりますが、現在の状況を改善したいと思いつつ改善できていないビジネスパーソンのほとんどは、実践すべき改善方法の食わず嫌いをしているだけなのだと思います。「夢をかなえるゾウ」を読んで、改めてそれを感じました。

 

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