鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

融資とレバレッジ効果

[要旨]

融資を受けることによって、レバレッジ効果(てこの作用)が大きくなり、自己資本に対する利益率は高くなるので、融資は積極的に活用すべきですが、これが高くなり過ぎると、自己資本比率は低くなり、経営が不安定になるので、注意が必要です。


[本文]

私は、会社は融資を積極的に活用するべきと考えていますが、その根拠に、レバレッジ効果という考え方があります。この、レバレッジ効果を説明する前に、自己資本経常利益率について説明します。自己資本経常利益率は、自己資本(純資産)に占める、経常利益の割合で、自己資本経常利益率=経常利益÷純資産で求めますが、高ければ高いほど、一定額の自己資本に対して多くの利益が得られているということを示しています。

さらに、この式を展開すると、自己資本経常利益率=経常利益÷純資産=(経常利益÷資産)÷(純資産÷資産)=総資産経常利益率÷自己資本比率となります。この式からわかるとおり、自己資本経常利益率は、総資産経常利益率と自己資本の徐で求められます。よって、もし、経常利益と資産の金額が変わらないとすれば、自己資本比率が低い、すなわち資産に占める純資産の金額が少ないほど自己資本経常利益率は高くなり、効率性は高くなるということができます。

したがって、多くの融資を受けるほど、資産に占める純資産の割合が低くなり、効率性が高くなるわけですが、このような効果をレバレッジ効果といいます。このレバレッジということばのもととなったレバー(Lever)は、「てこ」のことで、レバレッジ(Leverage)は「てこの作用」という意味です。そして、このレバレッジ効果の大きさを示す指標を、財務レバレッジといい、財務レバレッジ=資産÷純資産で計算します。

この式からわかるとおり、財務レバレッジは、自己資本比率の逆数であり、これを、前述の自己資本経常利益率の計算式に代入すると、自己資本経常利益率=総資産経常利益率÷自己資本比率=総資産経常利益率×財務レバレッジとなり、財務レバレッジが高いほど自己資本経常利益率が高くなることがわかります。

ところで、財務レバレッジは、高ければ高いほどよいかというと、必ずしもそうとは限りません。というのは、財務レバレッジが高いということは、その逆数である自己資本比率は低くなりますが、それが低くなりすぎてしまうと、事業活動の安定性に問題が生じるからです。したがって、会社は、融資を受けるなどして、レバレッジ効果を活用することが望ましい一方で、融資だけに頼り過ぎないようにしなければなりません。

では、レバレッジ効果はどれくらいがよいのかというと、これも一概には言えませんが、3~5倍(自己資本比率が20~30%)と言えます。このつり合いについては、経営者の判断になりますが、少なくとも、会社の安全性を重視しすぎて、レバレッジ効果を低くしてしまうことも、あまり賢明ではないと、私は考えています。


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