鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

経営セーフティ共済の薦め

[要旨]

取引先が倒産し、売掛金などを回収できなくなると、自社も倒産してしまいかねませんが、経営セーフティ共済に加入していると、直ちに、回収不能となった金額の融資を受けることができるので、自社の倒産を防ぐことができます。


[本文]

現在は、事業活動に、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、業績が悪化している会社が増加しています。ただ、金融機関が資金繰支援をしているために、倒産件数はそれほど増加していないようです。とはいえ、徐々に、コロナの影響が表面化してきて、資金繰が行き詰まる会社も増えてくることも考えられることから、それへの備えとして、経営セーフティ共済に加入しておくことをお薦めします。この、経営セーフティ共済は愛称であり、正式な名称は中小企業倒産防止共済といいます。名称からもわかるとおり、中小企業の倒産を防止するための共済で、独立行政法人中小企業基盤整備機構によって運営されています。(ご参考→ https://bit.ly/2N0QLhU

この共済に加入していると、どのような支援が受けられるのかというと、もし、取引先が倒産し、売掛金を支払ってもらえなくなったり、その会社が支払人(振出人)になっている手形や小切手が不渡りになったりしたときに、直ちに、その金額の融資を受けることができます。(融資条件は、無担保・無保証人・無利子で、融資期間は金額によって異なり、5か年~7年の分割返済です)この融資は、共済に加入している会社の権利の行使なので、融資の申込をした結果、融資審査で融資を拒まれるということはありません。すなわち、契約としては融資ではあるものの、保険に近い性格のものです。

ただし、制度上、融資額には8,000万円という上限があります。また、誰でも8,000万円まで融資が受けられるわけではなく、機構に支払った共済掛金の累計額の10倍という制約もあります。ですから、例えば、共済掛金を300万円支払った会社は、3,000万円の融資を受ける権利があります。ちなみに、掛金は、5千円から20万円の間で5千円単位の任意の金額を、毎月、収めますが、掛金の累計額が800万円になった時点で掛止めになります。

もうひとつ、注意が必要な点として、融資を受けた場合、その融資額の10分の1の金額の掛金を返還してもらう権利を失います。例えば、共済掛金の累計額が300万円の会社が、2,000万円の融資を受けた場合、その10分の1の金額の200万円の掛金を返還してもらう権利を失います。ちなみに、積立期間が1か年を経過したときは、任意の解約で掛金の80%が、3年4か月以上経過した時は、任意の解約で掛金の全額が返還されます。話をもどすと、掛金がもどらなくなるという点ではコストが大きいように考えられるものの、掛金を支払った時点で、その10倍の金額の、無担保・無保証・無利息という有利な融資を受けられる権利を得ることができるので、私はメリットの方が大きいと思います。

しかも、共済掛金は、支払った時点で全額を損金算入できるので、節税のメリットもある上に、前述のとおり、3年4か月経てば、任意の解約でも全額が戻るので、メリットは大きいと思います。そして、繰り返しになりますが、取引先の倒産してしまったときに融資をしてもらえる権利を得ることができるという点で、この経営セーフティ共済はとても心強い制度です。私が銀行に勤務していたとき、何度か、この共済に入っていたために、連鎖倒産に至らずに済んだという会社の事例を見ています。まだ、この共済を契約していない会社は、できるだけ早めに加入することをお薦めします。ちなみに、経営セーフティ共済は、民間金融機関で申込と契約が可能です。

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