鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

不渡り処分の猶予(3)

前回、不渡り処分の意味について説明しま

した。


しかし、手形交換所規則による取引停止処

分は、どちらかというと形式的な意味合い

が強いものです。


実質的には、1回目の不渡りを起こした時

点で、その会社は社会的な信用を大きく失

い、その時点で事業の継続ができなくなる

ことが決定的になります。


そして、2回目の不渡りが起きたときは、

事業が継続できなくなったことが、形式的

にも明確になるということです。


実は、銀行は、預金取引であるにもかかわ

らず、自行の当座預金の取引先が不渡りを

起こすことを極力避けようとしています。


なぜならば、前述のように、1回でも不渡

りが起きれば、その会社は社会的な信用を

失うので、そのきっかけとなる不渡りが、

自行の当座預金取引をしている会社で起き

れば、そのような会社と当座預金取引をし

ていた銀行の評価も下がるからです。


もちろん、それだけではなく、自行と当座

預金取引をしている会社は、多くは融資取

引もあり、その会社への融資金の回収が難

しくなります。


さらに、不渡りは、その会社と商取引をし

ている近隣の会社にも悪影響を与えること

になりますが、その取引相手の会社とも銀

行が融資取引をしていることもあるので、

銀行は、回収が難しくなる融資が増えてし

まうことになります。


そこで、実態としては、手形が取り立てに

回ってきたにもかかわらず、当座預金の残

高が不足する会社へは、当座預金に急いで

入金するよう、銀行から手形支払人に連絡

します。


その時点で、入金が間に合いそうであると

いう見込みであれば、銀行は、午後3時ま

で入金を待ちます。


入金の見込みがない場合は、手形の取立を

依頼した会社に対し、支払人から連絡し、

手形の取立を取消て欲しい旨を依頼するこ

とがあります。


この手形の取立の取消を、手形組戻といい

ます。


話がそれますが、手形組戻をした場合、手

形支払人は、支払期日をさらに後にした手

形を新たに発行し、それを手形組戻をして

もらった会社に持っていき、組戻された手

形と差し替えてもらうようです。


話を戻して、当座預金の残高が不足する会

社に対しては、緊急の融資を実行し、不渡

りを回避させるということも考えられます

が、私が銀行に勤務していた経験では、そ

のようなことは行われませんでした。


なぜなら、手形支払人は、手形決済資金が

不足するのであれば、それを事前に分かっ

ている訳ですから、そうであれば、遅くて

も手形期日の数日前に、銀行に融資の申し

込みに来ています。


その融資申込を事前にしていないというこ

とは、融資以外の方法で手形決済資金を集

めようとしていたか、または、融資を申し

込んでも断られるであろうと考えて、初め

から融資を申し込まなかったのであろうと

思われます。


いずれにしても、手形決済資金を融資で調

達しようという意思が、手形支払人にはな

いので、当日になって融資をするというこ

とはあまりありません。


ちなみに、話がそれますが、私が銀行に勤

務していたとき、「あす、手形が回ってく

るので、急いで融資をして欲しい」と融資

相手の会社から依頼され、その晩、急いで

融資稟議書を書き、本部まで出向いて融資

稟議書を届け、翌日の融資実行日の午後3

時ぎりぎりに本部決裁をもらって、ようや

く融資を実行し、その会社の不渡りを防い

だという経験は、何度かありました。


話を戻すと、商取引をしている会社として

は、1回目の不渡りが起きた時点で、その

会社は、社会的信用に相当のダメージを受

けるので、手形交換所の取引停止処分の制

裁は、形式的な意味合いが強いということ

が、今回の記事の結論です。


ところで、この不渡り処分の猶予について

は、別の質問が届いているので、それにつ

いては、次回、ご回答します。


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