鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

正味運転資金

前回の記事で、銀行から融資を受けている

会社は、銀行に対して、自社の事業の当事

者ではなく、協力者として接するべきと述

べました。


さらに、これ以外に、銀行との融資取引に

関し、中小企業の経営者の方が、銀行との

間に認識の開きがあると、私が感じること

に、資金不足になる原因をどう考えている

のかというものがあります。


とはいえ、これは、私だけでなく、多くの

人がすでに指摘していることなので、ここ

で詳しく述べる必要はないと思いますが、

それを簡単に述べると、事業活動で資金不

足になる要因には、売上が増えているとき

と、事業が赤字になっているときの、ふた

つの要因があるものの、経営者の方は、そ

の区別を理解していないことが多いという

ものです。


そして、銀行に対して不満をもつ経営者の

方の多くは、事業が赤字になっているにも

かかわらず、赤字であることには目が向か

ず、単に、資金不足であることのみを銀行

に訴えている方です。


それでは、自社が赤字であることに、経営

者の方が目が向かない要因として考えられ

ることは、経営者の方が会計を苦手として

いるということと、定期的に(可能であれ

ば、1か月ごとに)自社の業績を確認して

いないということです。


これに対する対策は、ストレートに、経営

者の方が、会計を学び、毎月、業績を確認

すること以外にありません。


では、今回、なぜ、資金不足の要因につい

て記事を書こうとしたのかというと、資金

不足が恒常化している会社には、資金運用

表を活用して欲しいと考えたからです。


ただし、資金運用表に関する詳細な説明は

割愛しますので、詳しく学びたい方は、拙

著「図解でわかる小さな会社の経営に活か

す会計いちばん最初に読む本」の54ペー

ジをお読みいただきたいと思います。


(ご参考→ http://amzn.to/1M3mszZ


とはいえ、資金運用表の作成も、最初は難

しいと思いますので、正味運転資金を確認

することからであれば、容易に着手できる

と思います。


正味運転資金は、資金運用表で計算される

項目のひとつであり、具体的には、次の計

算式で求められます。


正味運転資金=(売掛金受取手形+棚卸

資産)-(買掛金+支払手形)


この正味運転資金を確認する意義ですが、

売上高が増加していないにもかかわらず、

正味運転資金が増えていれば、それは赤字

が原因と考えられ、運転資金としての長期

融資の返済原資がなくなります。


これを言い換えれば、運転資金としての長

期融資は、一般的に、利益が確保できてい

れば返済に窮することはないということで

す。


したがって、資金繰が苦しく、運転資金と

しての長期融資の返済が難しくなっている

会社は、本当は、資金繰が苦しいのではな

く、事業が赤字の状態なのです。


ただ、決算を行わない段階では、赤字が明

確にならないので、資金不足のみが問題と

して浮き出てしまいます。


ですから、そのような会社が、本当に解決

しなければならないことは、銀行から新た

な融資を受けることではなく、赤字の状態

を抜け出すことなのですが、そのような会

社の多くは、銀行から融資を受けるだけで

その場をしのぎ、赤字の状態を抜け出す活

動まではしないため、ますます資金繰が悪

化するという悪循環に陥ってしまいます。


ここで、今回の記事の結論ですが、事業活

動が正常な状態(利益が得られる状態)で

あれば、運転資金としての長期融資の返済

は問題なく行うことができるので、経営者

の方は、融資の返済よりも、利益確保に注

力すべきということです。


そのためにも、資金運用表の活用や、正味

運転資金の確認は意義があります。


ちなみに、売上高が増加しているときは、

一般的に、正味運転資金が不足します。


そのような場合、銀行は、業績を評価し、

積極的に融資に応じてくれるでしょう。




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