鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

経理規定と会計情報の正確さ

先日、ある会社さまから依頼を受けて、粉

飾決算について講師を務めたのですが、そ

のときに出された質問と、それに対する私

の回答について述べます。


質問というのは、「会社に経理規定がない

と、なぜ、会社の会計処理が不正確になる

のか」という質問です。


このような質問が出たのは、私が、「中小

企業の多くは、粉飾をしているかどうかと

いう問題の前に、経理規定を定めている会

社は少なく、会計処理そのものが不正確に

なっているので、粉飾が問題になることは

少ない」と述べたからです。


話が本旨からそれますが、中小企業の多く

は、粉飾をしようとしません。


なぜなら、粉飾をするには労力がかかるか

らです。


さらに、労力がかかるからという理由で、

日常の経理も正確には行われていないとい

う状況が実態です。


そういった面では、中小企業の会計情報

は、あまり正確ではないということはでき

ますが、それは意図して不正確にしている

(≒粉飾している)のではなく、正確な記

録をしていないので、結果として不正確に

なっているということです。


ただ、会計情報が正確でないことを、広い

意味での粉飾と考えるのであれば、これも

粉飾と言えるのかもしれませんが、積極的

に強い意思をもって「粉飾」をしていると

いうことではなく、会計の記録を正確に行

うことに消極的であるためにそうなってい

るという状況です。


私は、銀行に勤務していた経験の中で、こ

のような中小企業の実態を目にしてきたの

ですが、財務分析などを専門書などで学ん

だだけの方には、会社の会計情報は正確に

記録されていると考えてしまいがちのよう

であり、この点で、私のような経験を持っ

ている人との間に、認識の違いが出てしま

うようです。


これについては、会計記録の手順である、

簿記について知識がないと、理解が難しい

こともあるようですので、財務分析に関心

がある方は、日本商工会議所の簿記検定の

3級、できれば2級をとることをお薦めし

ます。


なお、前述の「多くの中小企業は、会計の

記録を正確に行うことに、消極的である」

という私の受け止め方に対し、それはおか

しいと感じる方もいるかもしれません。


そのように感じる方は、「『中小企業の会

計に関する基本要領』に基づいて会計を記

録している会社は少ない」に置き換えて、

考えていただきたいと思います。


(「中小企業の会計に関する基本要領」に

ついては、こちらをご参照ください。

https://bit.ly/38UQxCr


正確には把握していませんが、「中小企業

の会計に関する基本要領」(以下、「中小

会計要領」と記します)に基づいて会計記

録を行っている会社は、それほど多くない

ようです。


中小会計要領は、「計算書類等の作成負担

は最小限に留め、中小企業に過重な負担を

課さない会計」(Ⅰ-1-(2))を実践

すること目的としていますが、そのため、

上場会社等に適用される企業会計基準と比

較して、正確性が犠牲になっている面もあ

ります。


しかし、そのような中小会計要領にさえも

基づかずに会計処理を行っていれば、その

会社の会計に関する情報の正確性は、決し

て高いとはいえないでしょう。


なお、今回の記事の本旨については、次回

の配信で述べたいと思います。

 

 

 

 

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