鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

人手不足倒産の増加

東京商工リサーチが、2019年の「全国

企業倒産状況」を公表しました。


(ご参考→ https://bit.ly/36Sixpk


私が注目した点は、(1)負債総額は、約

1.4兆円で、過去30年間最少、(2)

件数は8,383件で、前年比1.7%の

増加、(3)人手不足関連倒産が、調査開

始以来で最多の426件などです。


負債総額が少ないのは、倒産した上場会社

が1社のみだったということが主な理由と

思われますが、倒産件数では、リーマン

ショック以降減少していたものが、上昇に

転じたという点は、注目すべきことだと思

います。


中小企業にとって、現在の経営環境は、決

して追い風が吹いているとはいえないもの

の、だからといって、強い向かい風が吹い

ているとも言えないと思います。


そのような中、倒産件数が上昇に転じた理

由のひとつは、中小企業金融円滑化法(モ

ラトリアム法)が2009年12月に施行

されてから、金融庁が金融機関に求めてい

た、貸付条件の変更実施状況の報告が、

2019年3月で休止されたことが挙げら

れるのではないかと思います。


(ご参考→ https://bit.ly/35MhPsg


時限立法であった同法は、2013年3月

に終了しますが、その後も、貸付条件の変

更実施状況の報告が、表向きは任意とはい

え、金融機関に実質的に義務化されていた

ため、条件変更の実行率は、97%程度に

なっていたと言われています。


その報告も、前述のように、2019年3

月に休止されたことから、形式的にはなく

なったことになっている中小企業金融円滑

化法が、その時点で実質的にも効力がなく

なったと言えるでしょう。


私は、中小企業金融円滑化法は、リーマン

ショックや、東日本大震災の直後は、ある

程度は、中小企業の資金繰を維持する役割

を担っていたと言えると思いますが、現時

点では、必要性は低く、前述の報告の休止

は妥当だと思います。


そういった面では、厳しい言い方ですが、

同報告の休止以降、金融機関に融資の条件

変更に応じてもらえない会社があったとす

れば、それは止むを得ないものと考えてい

ます。


もうひとつ注目すべきことは、まだ割合が

低いとはいえ、人手不足関連倒産が増加し

ていることです。


さらに、運送業では、前年の238件から

254件に増加していますが、これは、ド

ライバー不足による人件費高騰が影響して

いるということを考えると、実質的な人手

不足倒産はもっと多いのかもしれません。


そう考えれば、中小企業の経営を安定化さ

せるには、資金調達だけでなく、人材確保

の巧緻もますます重要になっていると言え

ます。


この、人材を定着させるスキルは、経営者

としての能力の問われるところでもあり、

そういった面では、単に事業のスキルがあ

るというだけでは、これからは経営者とし

ての評価は得られにくくなっていくものと

思います。

 

 

 

 

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