鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

財務分析と融資審査

先日、日本商工リサーチが、粉飾決算に関

する調査結果を公表しました。


(ご参考→ https://bit.ly/354bRTC


この調査結果によれば、「2019年1月

~10月の、『粉飾決算』が一因となった

倒産は、16件となり、前年同期の8件か

ら2倍に増加した」そうです。


さらに、同社は、調査結果について、「金

融機関に事業性評価が浸透し、度重なるヒ

アリングで粉飾決算が露呈するケースもあ

り、今後も『粉飾倒産』の発覚が増える可

能性は高い」と述べています。


私が銀行に勤務していた時も、担当先を訪

問して、粉飾を発見したことがあります。


粉飾は、確定した決算書に対して行うもの

なので、訪問した会社で、たまたま目にし

た月次試算表が粉飾しないままの状態だっ

たことから、その会社が粉飾をしていたこ

とに気がつきました。


そうい面では、東京商工リサーチが、「金

融機関に事業性評価が浸透し、度重なるヒ

アリングで粉飾決算が露呈するケース」が

あるという指摘はその通りだと思います。


ところで、今回の記事の本旨は、財務分析

と融資審査は異なるということです。


融資審査をするときは、財務分析も行いま

すが、それは単純に財務諸表の数値から計

算するだけなの作業なので、わざわざ銀行

職員が電卓を叩いて計算するということは

せず、データベースから弾かれた計算結果

をパソコンの画面で見るだけです。


さらに、財務分析の結果だけから、融資審

査をすることも、銀行職員はあまり行いま

せん。


財務分析の結果から、融資の承認を出せそ

うな会社は業績のよい会社であり、むしろ

銀行からお願いしてでも融資を受けて欲し

い会社ですから、融資審査をする意味はあ

まりありません。


本当に融資審査をする会社は、融資をする

のにちょっと難があるというような、銀行

から見て判断に迷うような会社です。


融資審査の巧緻は、問題がありそうだけれ

ども、返済してもらえる会社を見抜くこと

と、問題なさそうな会社だけれども、返済

してもらえない会社を見抜くことです。


そういった意味合いから、銀行の融資審査

では、財務分析そのものには、ほとんど時

間をかけていません。


そして、もうひとつの重要なポイントは、

誤解を招く表現になることを恐れずに述べ

ると、中小企業の決算書はあまりあてにな

らないということです。


粉飾をしている会社の決算書は信用できな

いことは当然ですが、意図して粉飾してい

なくても、中小企業の多くは、経理規定な

どが未整備なので、結果として決算書が不

正確なものとなりがちです。


例えば、中小企業の損益計算書に、「前期

損益修正損」という勘定科目が計上される

例をときどき見ることがあります。


これは、前期の経理処理に誤りがあり、そ

れを修正するために、当期の費用として計

上する科目です。


また、前期損益修正損を計上するまでに至

らなくても、「役員貸付金」という科目が

ある場合もあります。


これは、会社としては費用になると判断し

経理処理したものが、決算書を作成する

段階になって、顧問税理士の方が費用には

ならないと判断し、経営者への貸付金とし

て処理するときに使う科目です。


このような場合、期中の月次決算書は、不

正確の状態ということになります。


以上の例は、分かりやすい例ですが、その

他にもさまざまな要因で、中小企業の財務

資料は、正確ではない場合が多いというの

が実情です。


ところが、「銀行は目利き能力がない」、

「銀行の融資機能は、人工知能に代わられ

る」という主張をしている人は、恐らく、

「中小企業の財務諸表は、大企業の財務諸

表と同様に、正確に作成されている」と考

えている人だと思います。


これを言い換えれば、「融資審査=財務分

析」と考えているのではないでしょうか?


確かに、「融資審査=財務分析」という前

提であれば、銀行職員が融資審査をする必

要はないでしょう。


でも、実際は、財務分析の結果だけで判断

をすると、ほとんどの中小企業は融資は承

認できない会社という状況が実態です。

 

 

 

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●12月13日(金)ランチ会兼勉強会のお

知らせ

 

12月13日(金)12時00分から、東

京都千代田区秋葉原駅の近くのレストラ

ンで、少人数に限定して、昼食をとりなが

らの融資に関する勉強会を開きたいと思い

ます。

 


■日時:令和元年12月13日(火)

12時00分~14時00分


■会場:和食ダイニングまぐろ問屋十代目

彌左エ門 アトレ秋葉原2店

東京都千代田区神田花岡町1-9

アトレ秋葉原2 4階


JR秋葉原駅昭和通り口を出て、すぐ左側

にあるエレベーターで4階に上がってくだ

さい。


東京メトロ日比谷線をご利用の場合、秋葉

原駅3番出口を出ると、正面にエレベータ

ーが見えます。


地図→ https://bit.ly/2lV8tZO

 

■参加費:1,000円(消費税込み)

当日、会場でお申し受けします。


別途、お食事をご注文し、各自、ご精算く

ださい。


■その他:食事をオーダーするという条件

を満たしていただければ、遅れての参加、

中途での退室は可能です。当日は、ご参加

いただいた方からの質問もお受けします。


■参加申し込み方法:フェイスブックイベ

ントページで、「参加」ボタンを押してく

ださい。→

https://www.facebook.com/events/532327930944980/