鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行の社外取締役の効果は限定的

先日の日本経済新聞に、「地銀改革-社外

取締役活用を柱に-金融庁、手引き作成

へ」という記事が載っていました。


(ご参考→ https://s.nikkei.com/2NtqV7u


記事の概要は、「収益環境が厳しい中での

事業戦略の立案や社外取締役の活用などを

求め、頭取の意識を高める」ために、「金

融庁は地方銀行の経営改革を促す論点をま

とめる」というものです。


その狙いについては、金融庁幹部の言葉を

引用し、「社外取締役に経営のチェック機

能を果たすだけでなく、地銀の成長に向け

た助言役としても存在感を発揮してほし

い」ということであると述べています。


私は、この銀行に対して社外取締役の活用

を求める金融庁の考え方は、まったく効果

がないとは言えないものの、あまり期待で

きないと考えています。


なぜなら、日本の会社での社外取締役の地

位は、実態は低いからです。


社外取締役は、会社法第2条第15項で

定義されており、分かりやすくいえば、そ

の会社や子会社の役員や従業員になったこ

とがない取締役のことです)


社外取締役は、社内取締役(厳密には、社

内取締役という言葉はありませんが、ここ

では便宜的に、社外取締役以外の取締役を

社内取締役と記します)と異なり、会社に

しがらみがない立場から、取締役会などで

自由に意見を述べたり、他の取締役を監視

する役割が期待されています。


会社の運営には、社外取締役のような立場

の人が必要という考え方そのものは、私も

賛同できるのですが、その一方で、社外取

締役を選任している会社の多くが、その社

外取締役と責任限定契約を結んでいるよう

です。


責任限定契約は、会社法第427条で規定

されている契約で、その契約を結んだ社外

取締役は、あらかじめ、責任を限定できる

ようになっています。


この責任とは、具体的には、株主代表訴訟

などによる損害賠償のことで、責任限定契

約のある社外取締役等は、善意かつ重過失

がない場合、「定款で定めた額の範囲内で

あらかじめ株式会社が定めた額と最低責任

限度額(社外取締役等の場合は役員報酬

2年分)とのいずれか高い額を限度」(会

社法第427条)とするものです。


ちなみに、責任限定契約は、業務執行を行

わない社内取締役と監査役との間では結ぶ

ことができますが、代表取締役や業務執行

を行う社内取締役との間では結ぶことがで

きません。


ただし、代表取締役や業務執行を行う社内

取締役の責任を、株主総会や取締役会の決

議で軽減することができます。


話を戻して、責任限定契約は、社外取締役

がそれを結んでいなければ、社内取締役と

同じ責任を負うことになるため、その責任

の重さから、社外取締役に就任に応じる人

がなかなか現れないという実態からできた

制度のようです。


その事情も理解できるのですが、そのよう

な「責任が軽い」取締役は、責任の重い社

内取締役と比較して、発言の重みも軽く

なってしまいます。


日本の銀行の社外取締役のすべてについて

確認はしていませんが、前述のように、多

くの銀行では、社外取締役との間で責任限

定契約を結んでおり、表面的には社外取締

役を選任してガバナンスを強化していると

アピールはできても、実態は、アドバイ

ザー的な存在にとどまっているものと思わ

れます。


これも繰り返しになりますが、責任限定契

約のある社外取締役の役割がまったく無意

味かというと、必ずしもそうではないと思

いますが、代表取締役や社内取締役の業務

運営が異常な状態に逸脱しそうになったと

きに、責任限定契約のある社外取締役がそ

の歯止めとなる役割を発揮できるかという

と、決定的な対策にはならないと思ってい

ます。


日本では、その言葉の響きだけで、社外取

締役が万能と考えている人も少なくないと

私は感じていますが、過度な期待はすべき

ではないと思います。


では、社外取締役に期待できないとすれば

どうすればよいのかというと、それは、私

も直ちに解決できる方法はないと考えてい

ます。


ただ、りそな銀行等を傘下に持つ、りそな

ホールディングスの会長に就任した、東日

本旅客鉄道出身の細谷英二さん(故人)の

ように、異業種から銀行の経営者に就き、

銀行の事業改革を行う事例が増えることが

望ましいと考えています。


また、2019年9月期中間期の業績予想

を、19億1,000万円の赤字に下方修

正した島根銀行も、完全に異業種とは言え

ませんが、金融持株会社SBIグループ

が指名する取締役2人を受け入れ、業務改

革を行うことにしています。


これからは、社外取締役よりも、こういっ

た実効力のある取締役の就任が、銀行の業

績向上には欠かせなくなっていくものと私

は考えています。




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http://yuushi-zaimu.net/conference/





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●11月19日ランチ会兼勉強会のお知らせ


11月19日(火)12時00分から、東

京都千代田区秋葉原駅の近くのレストラ

ンで、少人数に限定して、昼食をとりなが

らの融資に関する勉強会を開きたいと思い

ます。

 


■日時:令和元年11月19日(火)

12時00分~14時00分


■会場:和食ダイニングまぐろ問屋十代目

彌左エ門 アトレ秋葉原2店

東京都千代田区神田花岡町1-9

アトレ秋葉原2 4階


JR秋葉原駅昭和通り口を出て、すぐ左側

にあるエレベーターで4階に上がってくだ

さい。


東京メトロ日比谷線をご利用の場合、秋葉

原駅3番出口を出ると、正面にエレベータ

ーが見えます。


地図→ https://bit.ly/2lV8tZO

 

■参加費:1,000円(消費税込み)

当日、会場でお申し受けします。


別途、お食事をご注文し、各自、ご精算く

ださい。


■その他:食事をオーダーするという条件

を満たしていただければ、遅れての参加、

中途での退室は可能です。当日は、ご参加

いただいた方からの質問もお受けします。


■参加申し込み方法:フェイスブックイベ

ントページで、「参加」ボタンを押してく

ださい。→

https://www.facebook.com/events/410138059668211/